第一章:殺意の萌芽

「相変わらず、優衣の虫嫌いは筋金入りだよね。ゴキブリとかならまだ分かるけどさ、普通カブトムシにそこまで過敏に反応する?」


 やっと背もたれを登りきったばかりのカブトムシをひょいっと摘まみながら、天寺が言った。


「種類なんて関係ないの。昆虫自体が苦手なんだから。美夕もいるのがわかってたんならもっと早く教えてくれてもいいじゃない、心臓に悪いよ」


「あはは、ごめんね。何だか面白そうだったからさ。てか、こんなの別に害があるわけでもないんだし、恐がらなくても平気じゃない」


 言いながら、天寺がカブトムシを持ったまま羽舞へにじり寄ろうとする。


「いや! やめてよ! 本当に駄目なんだから」


 危険を察した羽舞が、咄嗟に絵夢たちのいる方へと後ずさる。

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