第一章:殺意の萌芽

「ど、どうしたんですか? いきなり悲鳴なんかあげて」


 突然の悲鳴に困惑した様子で嶺垣が訊ねると、羽舞は自分が座っていた椅子の辺りを指さした。


 全員がそちらへ視線を向ける。


「……え? これって……」


 羽舞が座っていた椅子の背もたれ部分。


 そこに、もそもそと動く黒い物体を見つけ、嶺垣が顔を近づけた。


「……カブトムシですよねこれ。うわ、珍しい。なんか久しぶりに見た気がする」


 背もたれをゆっくりとしたペースでよじ登っている黒い物体、オスのカブトムシをまじまじと見つめて嶺垣が呟いた。


「確かに、カブトムシだね。へぇ、こんな都会にも生息してるんだ」


 絵夢の中では田舎の山に生息しているイメージしかなかったため、少しばかり驚いてしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る