第一章:殺意の萌芽

 目の前にいるこの日向 鈴水だって、本来なら友達と普通に遊んでいたい年頃のはずだ。


 アイドルという職業上仕事が忙しいのは仕方のないことだが、だからこそせめて休みの日くらいは余計なことには気を遣わないで自由にしていたいはずだろうに。


「きゃあ!」


 絵夢がぼんやりと日向の話を聞いていた最中、突然誰かの短い悲鳴が上がった。


(……?)


 何事かと思いつつ、悲鳴が聞こえた方を振り向くと、今まで座っていたはずの羽舞が驚いたように口元をおさえて立ち上がっていた。


 そのすぐ近くでは、紙コップを持ったままの天寺が面白そうに笑って立っており、羽舞の正面に座っていた影宮はきょとんとしたようにある一点を見つめていた。

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