第一章:殺意の萌芽

「平気平気。俺たちにまで文句言ってくるようなスタッフはここにはいないから」


 嶺垣の呟きに首だけ振り向かせて答え、草本はちらりと通路の途中に設けられたエレベーターを見て小さく舌打ちをした。


 絵夢もそちらに視線を向ける。


 何人かのスタッフが、ちょうど何か大きな荷物を積み込もうとするところだった。


「あれじゃエレベーターは使えないな。申し訳ないけど、階段で行こう」


「あれ? さっきの部屋へ行くんじゃないんですか?」


 エレベーター横の小さな階段を指さす草本に、嶺垣が首を傾ける。


 食事に行く前に日向たちと喋っていた部屋は一階にあるため、あの部屋へ行くなら階段は不要のはずだ。


「違うよ。今から行くのは出演者用の楽屋みたいな部屋かな。本番が近くなると、大体みんなそこに集まるんだ」

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