第一章:殺意の萌芽

「わたしも、前にちょっとだけ覗いたことあるんですよ。本番直前だったし、みんなピリピリしてるのかなって思ったら全然そんな様子なくて少し意外でした」


 階段を上る絵夢たちを背後から見上げるようなかたちで、影宮が言った。


「へぇ、慣れてるから緊張とかしないんですかね。さすがに凄いなぁ」


 嶺垣が感心したように呟くと、草本が小さく手を振って笑った。


「慣れてるってのもあるかもしれないけど、彼女らの場合は緊張感が足りないだけかもしれないよ。舞台に上がる直前までくだらない話で笑ったりしてるときあるから」


 二階まで上がると、通路を右側へ曲がる。


 そのまま三十メートルも進んだだろうか。


 向かって左手にある白い扉を指さして草本は足を止めた。

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