第一章:殺意の萌芽

        【4】


 午後十二時。


 草本が案内してくれた店は、小さなイタリア料理店だった。


 店内へ入るなり、草本はお勧めメニューをいくつか教えてくれたが、絵夢はあえて一番安いピザを注文することにしておいた。


 食事の間、嶺垣は光野と草本にあれこれと質問を繰り返し、何かを答えてもらう度にいちいちはしゃぐように笑った。


 光野のマネージャーである的場は、そんな雑談に興じる三人を尻目に、事務的に食事を済ませると終始手帳や携帯電話をいじり続けているだけだった。


「あ、探偵さんだ。食事に行ってたんだって?」


 絵夢の予想通りに草本が全員分の会計を済ませてライヴ会場に戻ると、裏口の前に立っていた天寺がこちらに気付き話しかけてきた。

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