第一章:殺意の萌芽

「この後には待ちに待ったライヴがあるんですから。もう、最高です!」


 ぐっと拳を握り、まるで熱弁するような口調で語る自分の助手に、絵夢は鼻でため息をついた。


(本人が楽しめているなら十分かな)


 もともと今日は普段から真面目に頑張ってくれている嶺垣へのお礼として付き合っているのだ。


 正直自分は疲れるが、嶺垣本人がこうして喜んでいるのだから、とりあえずこれで良いのだろう。


 そんなことを考えながら、絵夢も草本たちの後へ続いて部屋を出る。


 時刻は午前十時五十分。


 ライヴが始まる予定時刻まで、残り約一時間半――。

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