第一章:殺意の萌芽

「……ごめんなさい。一応、そういうネタバレみたいなことは教えてあげることはできないの」


 嶺垣から目を逸らし、ばつの悪そうな口調で光野は言った。


「万が一、手品のトリックが一般に知られちゃうようなことになったら他の同業者にまで迷惑かかっちゃうから。それに、今言ったナイフを使った手品はもうやめちゃったのよ。いつまでも同じ内容じゃお客さんも飽きちゃうでしょう?」


「えー? あのマジック好きだったのに。なんかちょっと残念。テレビで披露してた時は毎回盛り上がってたじゃないですか」


「ええ……、そうね」


 どこか不満そうに告げる嶺垣に対し、複雑な様子で頷く光野。


「いつも観覧に来てたお客さんを一人選んで箱に入ってもらうのが印象に残ってるんですよね。毎回選ばれた人は不安そうな表情で、いつもハラハラして見てましたよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る