第一章:殺意の萌芽

 それなりに知名度のある人物を相手に、ことごとく見覚えがないというこの状況を客観的にみると本当に自分が場違いな所に来ていると認識せざるを得ない。


 一瞬、光野の背後に立つ男と目が合った。


 しかし、すぐに視線を手帳へと落とし難しそうな顔でページを捲りはじめた。


(光野 雫のマネージャー、か)


 見た感じ、三十代といったところだろうか。


 身長は百六十センチほどで、光野よりも幾分小さい。


「的場さんのことは気にしないであげて。ここ最近は今後のスケジュール調整でちょっと必死になってるから」


「はぁ……、なんだか大変そうですね」


 忙しいのは羨ましいことだが、ほんのちょっとした移動時間まで仕事にとられるというのは辛いものがあるなと絵夢は思う。

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