第一章:殺意の萌芽

 そう言ってにこりと微笑むと、光野は静かに絵夢の前に歩み出てきた。


「こんにちは。光野ひかりのしずくです。後ろにいるのは私のマネージャーの的場まとば裕太ゆうたさん」


 手品師ということは、この女性がライヴの前座をやるということか。


 マジマジと顔を見つめるも、やはり過去にテレビ等で見た記憶はない。


「どうかしました?」


 じっと見つめていたために、光野が怪訝そうに眉根を寄せる。


「ああ、いえ。なんでもありません」


 貴女の手品を見たことがありません、とは言えない。


 レイニーや草本 勝希に対してもそうだが、絵夢自身どうしてもこういうテレビや芸能関係のジャンルには疎いとあらためて実感させられてしまう。

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