第一章:殺意の萌芽

「からかわないで下さいよ。あたしと絵夢さんはそんな関係じゃありません。もっと素敵な彼氏見つける予定なんですから」


「そういえば嶺垣くん、半年前にもそんなこと言ってたよね?」


 今年の二月頃だったか、嶺垣が事務所でミカンを食べながら夏までに彼氏を見つけると宣言していたことを思い出し、絵夢はポツリと呟いた。


「もう夏になってるよ?」


「余計なお世話ですよ。もぉ、変なとこで記憶力良いんですから。そういうのは仕事で発揮して下さい」


 発揮するほど仕事が入ってこないのだから、言われてもどうすることもできない。


「彼氏かぁ……。わたし達には作る暇もないから、そういう悩みはなんだか羨ましいな」

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