第一章:殺意の萌芽

「あー、確かに。ここ最近は特に忙しいから、自由な時間がまずないよね」


 神川の呟きに天寺が肩を竦めて答える。


「だったら、今度一緒に食事にでも行かない? 何でも奢るよ」


 冗談か本気か分からないような口調で言う草本。


「え? それ、ひょっとして口説いてます?」


「まさか、そんなつもりはないよ。大体、美夕ちゃんの場合は自分から攻めるタイプでしょ?」


「それ、なんかわたしが男勝りみたいなニュアンスで言ってません?」


「あれ、違った?」


 とぼけたように草本が首を傾けると、天寺は軽く拳を握りしめる。


「おっと、暴力は反対だよ」


「これでもわたし、れっきとした女の子なんだけどな」


 握りしめた拳を草本の胸元へ軽く突きだした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る