第一章:殺意の萌芽

「あはは、ごめんごめん。でも、ほんとにアイドルになれる要素はあると思うよ」


 にこやかに笑いつつ、草本は近くの灰皿へ灰を落とす。


「香菜には将来自分のお店を開く夢があるんだから、そんな話には乗らないですよ」


「店? へぇ、そんな夢があるんだ?」


「はい、花屋をやりたいと思ってるんです」


「良い夢じゃないですか。冴えない探偵の助手なんてしてるあたしなんかよりよっぽどマシですよ」


 冴えないは余計ではないか。草本たちの会話に交ざる嶺垣の何気ない一言に一瞬口を挟みそうになる絵夢だったが、実際に冴えないのは事実のような気もしたので反論するのはやめておくことにした。


「なんか、絵夢さんが困った顔しちゃってますよぉ」

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