第一章:殺意の萌芽

「おや? あなたはさっきの……。どうしてこんなところに?」


 絵夢に気づいた草本が、少し意外そうな表情をみせた。


「ちょっと、いろいろとありまして。舞台裏を見学させてもらっています。草本さんは打ち合わせは終わったんですか?」


「ええ、今終わりました。後はまぁ、本番に備えて身体の緊張をほぐしておくだけですかね」


 そう答えて、草本は胸ポケットから煙草を取出し口に咥える。


「絵夢さんって、草本さんのお知り合いなんですか?」


 ずっと黙って話を聞いていた影宮が、絵夢たち二人を交互に見ながら首を傾げる。


「いえ、ここへ来る途中の電車でたまたま一緒になっただけで、知り合いというほどではないですよ」


 答えながら、絵夢は小さく頭を振る。

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