第一章:殺意の萌芽

 他人の事情をあまり詮索するべきではないと思いつつ、絵夢はそんな疑問を胸中に浮かべる。


「リハーサル見ないなら、スタッフさん達の作業でも見学しててもらうしかないわね。そんなに面白くないかもしれないけど……」


 少し困ったように神川が言うと、羽舞も小さく頷いてみせた。


「そうね。誰かに案内とか頼んでみたら良いんじゃないかしら。一人くらい、手の空いてる人が――」


「あれ? どうしたのみんな集まって」


 羽舞の声に重なるようなタイミングで突然男の声が聞こえ、全員が一斉に振り返る。


(あ、あの人は)


 声のした場所、部屋の入り口に立っていたのは草本 勝希だった。


 ライヴの衣装なのか、電車に乗っていた時とは違い白いジャケットを着ている。

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