第一章:殺意の萌芽

「お菓子気にしてる場合ですか?」


 半眼で呻く嶺垣の声を聞きながら、白い丸テーブルの上に無造作に置かれたチョコレートを一つ摘まみ、絵夢は口に入れた。


「嶺垣くんも食べる?」


「いりません。なんかカロリー高そうだし」


「あ、そういうの気にしてたんだ?」


 やはり普段から階段を使って出勤しているのは、体型を気にしてのことだったのだろうか。


「そりゃ、あたしだって女の子なんですからね、気にくらいしますよ。……てか、なんですか、その意外なことを知っちゃったみたいな顔は?」


「いや、身近にもまだまだ知らないことがあるんだなぁと思って」


 目を細めて見上げる嶺垣から視線を逸らして、絵夢はもう一つチョコレートを手に取った。

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