第一章:殺意の萌芽

 反射的に首を竦めつつ日向が振り返る。


「あ、天寺さん……」


「まったく、すぐ戻るとか言ってたくせに何を話し込んでんの?」


 天寺と呼ばれたその人物は、両手を腰にあてながら目を細めた。


「いやぁ~、すみません、つい……」


「つい、じゃないでしょ。これから大事なライヴ控えてるんだから、勝手な行動しないでよ」


 ごまかし笑いを浮かべる日向にそう告げると、今度は絵夢と嶺垣の方へ視線を移してくる。


「で? 誰なの、この人たちは」


「お客さんですよぉ。今日のライヴを観にきてくれたんです」


「客……? ああ、じゃあわたしたちのファンなんだ?」

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