第一章:殺意の萌芽

 顎に手をやりながら嶺垣が言うと、日向は少し困ったようにかぶりを振った。


「光野さんはそんな人じゃないですよぉ。きっと、何か事情があるんだと思います」


「事情……、所属してる事務所とかが裏で問題を抱えてる、とか」


「ずいぶん生々しい推理ですねぇ……」


 苦笑混じりに言葉を返す日向。


「いやぁ、別にこんなのは推理――」


 それに対して、なおも何かを言おうとする嶺垣だったが、突然日向の背後へ現れた人物に気がつくと固まったように口の動きを止めた。


 いつの間に近づいていたんだろうと思いながら絵夢が見ていると、その背後に立った人物は、


「鈴水、あんた香菜さん迎えに行くだけのことにいつまで時間かけてんのよ」


 と、呆れたように言いながら軽く日向の頭を叩いた。

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