プロローグ

 そのチケットを絵夢の前に差し出す。


「え? 何これ?」


 置かれたチケットをしげしげと見つめて、絵夢は訝しそうに眉根を寄せる。


「何って、チケットですよ。今度の日曜日にそこに書いてある多目的ホールで、レイニーのシークレットライヴがあるんです。ほんとは友達が行くはずだったんですけど、急用ができて行けなくなっちゃって」


「へぇ、それで譲り受けたってこと?」


「そうです。ラッキーですよ、あのレイニーを生で見れるなんて」


「そんなに有名なの? レイニーなんて聞いたことないなぁ……。海外のグループとか?」


 ぽりぽりと頭を掻きながら、絵夢は嶺垣を見上げる。


「嘘……、絵夢さんレイニー知らないんですか? 今あたしたちの世代ではかなり有名な、女性四人組のヴォーカルグループですよ。テレビとかによく出てるのに」 

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