プロローグ

「良い物?」


「ええ、何だと思います?」


 もったいぶって訊ねると、その人物、雨池あまち絵夢えむは、


「さぁ……、お金とか?」


 と答えてきた。


 雨池絵夢。三年前からこの雑居ビルで探偵事務所を始めたばかりの新米探偵。


 年齢は二十三歳で嶺垣よりも二つ年上だ。


「……それは絵夢さんが欲しい物でしょう?」


「うん、まぁね。今月も生活が厳しいよ。どうしようか?」


「そんなの、あたしに言われても知りませんよ」


 言って、アイスコーヒーを一口飲むと、嶺垣はポケットから二枚のチケットを取り出した。


「良い物っていうのは、これですよ」

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