第四十四話
「もう一度言ってみぃや、あぁ?」
「何度だって言ってやるわ、この腐れ外道が!」
現場は酷く混乱していた。割り箸やらお玉やらがビュンビュン飛び回っている。
「上等じゃねぇか!」
「そりゃ、こっちのセリフだ。ボケェ!」
示し合わせたように中心にいた両者が殴り合いを開始し、周りもそれにつられてどんどんとヒートアップしていく。
「アマテラス……」
「すまんの。これ、世界の危機でも何でもないただの
最後の頼みの綱であるアマテラスも力は貸して貰えない。ただでさえ危ない状況だからこれよりも被害を広げるわけにはいかない。
しかし私にできることは、おそらくない。無策に飛び込んでも1秒と持たずにボッコボコにされること間違いなしだ。
そしてちなみに鈴蘭はというと。
「おらおら、お前らもっと本気出せ!」
喧嘩の真っ只中で、更には油を注いでいるのだった。
とりあえずは後でお説教といきましょう。ただこの場においては場の収束が最優先事項。このまま大きくなっては手が付けられなくなる。
「鈴蘭殿、お止めふぐっ。あちょぎゃぁぁ!」
大乱闘のさ中時折聞こえる杏香の悲鳴。まさか最強の鬼が悲鳴をあげる事態になっているなんて。
そんな中で私は一体何をどうすればいいのだろう。
もはや私にできることなど本当にないのではないだろうか。
「どうします?」
「じきに収まるじゃろう、がそうなる前に最悪空間が
私には空間が歪む、捩れる、
今この場では人間、妖怪、幽霊が入り交じり互いが互いを攻撃している。
今はまだ殴り合いの乱闘が繰り広げられている、この時点でも既に十分問題なのだけれど。
「どう、すれば……?」
「花撫、これを使うのじゃ」
アマテラスが〇ラえもんの容量でお腹の辺りに貼り付けてあったポケットからメガホンらしきものを取り出す。
いつからそんなポケットが貼り付けてあったのだろう、ここに来た時には何もついていなかったと思うのだけれど。
「これは?」
「一般的な言い方をすればメガホンじゃ、拡声器とも言うの」
「……それは?」
「うむ、見ての通り四次元ポケットじゃ、と言いたいところなんじゃが実際は少々異なる物じゃ」
残念なような誇るような何とも言えない表情を浮かべている。
四次元ポケットなんてそれ自体が二次元の産物なのだから、一種の夢の存在だろう。それを再現しようとは、余程暇を持て余しているのだろう。
「これはいわゆるゲートの応用じゃ。ポケットの底の――って待つのじゃ、妾の説明を聞くのじゃ」
聞いておいてなんだけれど何となく長くなりそうな予感がしたのでささっとメガホンだけを持って現場に駆け寄る。
事件は事件現場で起きていてそれは決して待っていてはくれないのだ。説明のときに待ってくれるのは日曜日の朝くらい、時間も世界もなにもそんなに甘くはない。
善は急げというのだし行動が早いに越したことはない。
大きく息を吸い込んで。
「少し落ち着きなさい! ここは神社です!」
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