第二十四話
「畑? なんでまた」
駆けていくアマテラスの首根っこをつかみながら聞き返す。
確かにかなりの広さがあるから、実際に畑にすることは造作もないだろう。むしろこれは広すぎるくらいだ。
それに畑にできればそれこそかなりの食材を確保することができる。
悪い案ではないのは確かだろう。
「ほれ、妾が燃やしたからここらの土には炭が大量に含まれることになるのじゃろ。ならば、それを肥料として使わぬ理由がどこにあるのじゃ」
「まぁ、確かに名案ではあるんだけど……」
この広さの土地を初めから耕して、なんてやっていたら一体どれくらい時間がかかるのだろ。
少なくとも1日で終わるような広さではないのだ。流石に何日も連続して作業というのはやりたくない。
そもそもそんなことしたら体がもたない。
「それに関しては妾に任せてほしいのじゃ。1日で終わらせてみせるのじゃ」
そう高らかに宣言したかと思うと目の前にゲートが展開された。このゲートはどうやら瞬間移動の改良版らしく、基本的な機能はそのままで消費霊力も抑えたらしい。
まぁ、簡単に言うなら瞬間移動の上位互換ということになる。
とは言ってもそれなりの代償もあるようで、まず自分の行ったことのあるところにしかゲートは開けない、そして何より瞬間移動の術式よりも複雑でかなり厄介なことになっているそうだ。
ゲートをくぐる際に振り返ったアマテラスから「絶対に覗いてはいけんぞ」という謎の警告を受けた。しかし、そう言われると覗きたくなるのは人間の心理だろう。言われたこととは逆のことをしたくなる、反骨精神というやつだ。
でも逆に「覗け」と言われたら躊躇なく覗くのだからどうすればいいというのか。
流石は猫をも殺す好奇心である。
しかし残念なことに他にもやることが一杯ありすぎるから覗くに覗けないのが現実だろう。
結局アマテラスの術できれいさっぱり片付いてしまうのだったら切り倒された木や切り株をひぃひぃ言いながら運んでいた私の午前中とは本当に何だったのだろう。
今更気にしても仕方がないことではあるけれどそれでもおいそれと割り切れるものではない。
だって完全に無駄働きじゃん、それも全身のいたるところに傷まで負ってさ。
ていうかまた逃げられた。言葉巧みというかなんというか、どうでもいい悪知恵ばかりがはたらく女神様だこと……。
「そういえば、鈴蘭は目を覚ましたかな……」
なんだかんだ言って鈴蘭が倒れてからもう半日も経っている。
そう思っていたけれど結果から言うとこの日鈴蘭が目を覚ますことはなかった。
ちなみに畑も完成させられなかったらしい。
何やら色々と難航しているようだ。アマテラスは「数日待ってくれ」と、泣く泣く頼んできた。別にどれだけ時間がかかろうと問題はないのでとりあえずは待つことにした。
それに畑があっても作物がないんじゃ話にならないし。仕方がないから明日はそれらのことを踏まえてホームセンターにでも行ってこようかな。
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