第二十一話
鈴蘭が倒れた後、鈴蘭を母屋へと運び込みやっとの思いで布団に寝かせる。
「というか、アマテラスも手伝ってくれてもよかったんじゃないですか」
そもそも、鈴蘭が倒れたのはアマテラスのせいといっても過言ではないのだ。
きっと元凶は鈴蘭自身なんだろうけれども。
「それに関してはすまないのじゃ、というか今日は静かすぎはせんかの?」
挙句の果てにはそんなことを呟きだす。
「今日は神主さんがいませんから」
「それだけではないのだが……そうなのか、つまらんの」
どこか含みのあるような返答だ。
ちなみに神主が今日いないのは会議があるから。
神社の神主が参加する会議とはいったい何なのかは物凄く気になるが、ともかくそのおかげで彼は知らないところで命拾いしたようだ。
鈴蘭だけでも勘弁してほしいのに神主まで倒れたらそれこそ手が付けられなくなる。
「そう言えばアマテラスは鈴蘭の考えていることが分からないんですか?」
アマテラスは神様なのだ、それも最高神なのだ。
それくらい造作もないのではないだろうか。と、ふと思った。
「……それが妾達と花撫達の認知の差じゃの」
「認知の差……ですか」
つまりは神であっても鈴蘭の考えは読めない……あれ?
立場が逆転している?
少なくとも鈴蘭がアマテラスの考えを読むということはできないのだろう。
神に作られたのが仙人ならば神よりも強い力を有しているはずもない。そもそも仙人は神の代わりにこの世界を調整する、させるために生み出されたと聞いた。
ならば、仙人が神よりも強いという事態は存在しえない。
「……悪いとは言わんがやはりお前達は妾達を万能だと思いすぎじゃ。それも仕方のないことなのかもしれんが、前にも言ったじゃろ。妾達は有能であっても万能ではないのじゃと」
それはつまるところ、鈴蘭の考えていることが神には読み取れないということなのだろうか。
「まぁ、正確には読み取りずらいのじゃ。なんとなく、それこそ何か隠している、それくらいしかわからないのじゃ。向こうはこっちの考えていることは何もわからないらしいがの。……ちなみに花撫、相手の考えを読むのに必要なのはなんだと思う?」
何と言われても、なんなんだろう。相手のことを理解するとか、そういうことなのだろうか。
「う~む、質問の仕方が悪かったの。そういった意味ではなく、相手の考えを読む能力を使える、使って効果のある最低条件といった方がいいかの」
むしろ逆にわかりずらくなったのだけれど……。
それはつまりはどういったことなのだろうか。私が考えているものとは認識が違うというのは確かだけれどそれ以外は何が言いたいのか意味が分からない。
「まぁ、そんなもんじゃろうな。逆に今の時代知っとる方がおかしいのじゃ」
「なら一体……」
「格じゃ。相手の考えを読めるのはより上位の格を持つもの、この世界に存在する者は大なり小なり必ずそれぞれの格を持っておるのじゃ」
「……その格っていうのは人格とかそういうようなものですか?」
「
本当に世の中は知らないことだらけである。
いや、私が知ろうとしなかっただけなのだろうか。なんにしても勉強不足だ。
「格というのは簡単に言えばその個体の全てを含んだこの世界における序列じゃ」
序列、つまりはこの世界における身分や位ということにあたるのだろうか。
「ということは、序列が上位になればなるほど下位の考えを見通すことができる?」
「うむ、流石の洞察力じゃ。まさしくその通りなのじゃ」
アマテラスが鈴蘭の考えを読み取れないというのは格の序列が近いからということになる。つまり、仙人というのはそれだけ神に近いということ。
そしてやっぱり鈴蘭は腐っても仙人ということ。私の想像がつかないほど強大な力を持っているということ。
なんかいまいち釈然としないけれど。
「ちなみに同格同士でも考えを読むことはできん。じゃから神は神の考えを読めんし人間は人間の考えを読めんのじゃ、例外はあるがの」
少なくとも今までの説明を聞いてわかることはどれだけ神というものがすごいのか、そしてそれに迫る仙人の異常さだろう。
「……仙人の定義ってなんだと思う?」
アマテラスは更にそう私に問いかける。
そもそも仙人の定義などあったのだろうか、だとしたらそれは鈴蘭すら知らないことになる。
そんなことを私が知るはずもない。
にしても私は鈴蘭のことも仙人のことも全然知らない。更に言うならアマテラスのことだって完全には理解していない。
きっと知った気になっているだけなのだろう。
「分からないです」
素直に諦めて首を横に振る。
「仙人というのは一言でいえば人間離れした人間じゃ、そして霊術が使えなくてはならない。それが最低条件、そして仙人の定義は人間の身で不老不死であるということ」
確かに霊術が使えるのならその時点で人間離れしている。
でも霊術が使えても仙人ではない、それは私が良く理解している。
そもそもその証明が私自身だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます