第十四話

 そもそもなんでここに鈴蘭がいるのだろうか。


 固有能力がどうこうよりもそっちの方が断然気になる、いや固有能力についても気にならないと言ったら噓になるのだけれども。


 なんせ今まで断固としてこの場に現れなかった鈴蘭が自ら進んで登場しているのだ。

 一体どう言う風の吹き回しなのだろう、と思うのが普通だろう。

 少なくとも私はそう思った。


 もしかしたら、何か一大事がある、とか?


「いや、そんなんじゃなくてただこの前のサンドイッチのお礼を言いに来たのだけれど……来ちゃいけなかったか?」


 物凄く寂しそうな顔でこちらの様子を伺う。


「あっ、いやいや。そういう訳じゃないくて、そもそも鈴蘭はここには来れないんじゃないの?」


 キョトンと首をかしげる鈴蘭。


「いや、普通に来れるぞ?」


 あれれ、どういうことだろう。なんか聞いた話とはだいぶ違うのだけれど……。


「ま、なるべく来たくはないが花撫に会うためなら地球の裏までも追っていくぞ」


「………………」


「待って、そんなごみを見るような目で見つめないで……あ、でもそんな花撫も悪くないかも」


 そうして頬を染めてくねくねと身をよじる鈴蘭。

 随分とこの状況を楽しんでいるようだ。というかこれ以上変態になられても困る。

 一度社会的な制裁を加えた方がいいのかもしれない。


 そんなこんなで今日も世界は平和で鈴蘭は異常なまでに正常運転です。


「……それじゃ、なんで今まで来なかったの?」


 別に来るなとも言っていないし、来ようと思えば今のように来れたのだ。普段の鈴蘭の態度からして来ない理由がわからない。


「……り、理由がないと追い返されそうだから」


 ボソボソと小声で呟く。


「……へ?」


「いや、だから……理由がないと追い返されそうだし……」


 なんだろうもっとこうしっかりとした、そうなんかの因縁があるとか。そういうことでは無いのだろうか。もう今すぐ追い返してしまおうか。


「………………」


「い、いいもん。これからは毎日来てやるんだから」


 鈴蘭は耳まで真っ赤に染めて、母屋の方へと走っていった。


「ああいう所は普通の女の子なのに」


 彼女のそういう面に触れていると色々と物凄く残念に思う。というかなんで母屋の方に?


「うぎゃあぁぁぁ、なんでお前がここにいるんだぁあああ」


 そんな私の疑問に答えるかのように神主の悲鳴が響いた。

 あれ? さっき毎日って言った?


「ちょ、鈴蘭。流石に毎日は来ないでよ!」


 慌てて母屋へと足を走らせる。


 アマテラスはそんな状況を楽しそうに眺めているのだった。


 「まったく、ここに来るのは初めてじゃないからって暴れないでよ。ところで私に会うよりも前にきてったって本当?」


 なんだかんだであの後気を失った神主を部屋に運び、一段落した居間には私と鈴蘭とアマテラスの3人? が座ってお茶をすすっている。


「うん、昔とは言っても十数年くらい前になるのかな」



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