第十三話
「それで私は結局どうすればいいんですか?」
「選択肢は3つあるのじゃ。1つは花撫がどこかの派閥に属すること、2つ目はどこにも属さず全ての派閥と渡り合うこと、3つ目はどこかで隠れ暮らすこと。それが主に上げられる」
どう考えても避けるべきは1つ目と3つ目。
1つ目はどこについたとしても二界を巻き込んだ全面戦争になる、最悪現界にすら影響が及びかねない。
3つ目はそれこそ死ぬまで逃げ続けることになってしまう。ただでさえ人間よりも寿命が長いのだ、簡単なことでは諦めないだろう。
そもそもどこの派閥も諦める訳にはいかないのだろうから。
そうなると2つ目ということになるのだけれど一介の巫女に一派閥と渡り合えるだけの力はない。
どれだけくだらないことをやっていようとしても二界をまとめているような派閥たちなのだ、これは詰みというやつだ。どう転ぼうが待っているのは競争という戦争のみ。
これが運命の強制というものなのだろうか。
一体私はどうすればいいのだろうか。
「私抜きで随分と面白そうなことやってるんだね」
そこに
***
「ふ~ん、そうかそうか……」
そうして一から鈴蘭に説明したのだったのだが。
「鈴蘭、怒ってる?」
普段の彼女からは想像もできないような不愉快といったオーラのようなものを感じる。こうモヤモヤと黒い霧が立ち込めるような感じ。
仲間はずれのようになってしまったのが問題だろうか。
「いや、そこじゃなくて、この戦争には何を言われても参加しないと思っていたけれどたった今気が変わった。私の花撫に手を出そうものなら文字通り原子レベルまで分解してやる」
いつから私は鈴蘭の所有物になっていたのだろうか。
しかし鈴蘭は冗談じゃなく物体を原子レベルまだ分解することができるから、というか本当に分解しそうだからとても怖い。
今の状態なら魔王のように歪んだ笑顔で「許して欲しいのならば死んで償え」とか言ってそうである。
どちらにせよ死ぬしかないとはなんとも鬼畜である。
「そんなことはしないさ。何も言わせるつもりないし。さて、まずしなくちゃいけないことがある。そう花撫の能力底上げプラス固有能力の発現だ!」
しれっとさらっととんでもないことを当然のように言い放つ。少なくとも今の状態ならかっこいいと言うのに……。
「ん? 固有能力?」
いや、能力の底上げはまだわかる、でも問題なのは後半の部分。固有能力はそれこそ仙人レベルの強さを保持しなければ発現しないと聞いたことがある。少なくとも今の私では力不足もいいところ。そもそも仙人レベルの力など手に入れようとして手に入るものでもない。
「大丈夫、素体は問題ないから1ヶ月くらいでなんとかなる」
1ヶ月修行した程度で手に入るものなのだろうか。
それはそれで驚きなのだがそんな悠長なことをしていても大丈夫なのだろうか。
それこそ戦争が始まったり、私の身柄が狙われたりしないのだろうか。
「それに関しては問題ない。今はどちらの勢力も拮抗しているだろうからこの状態で戦争を吹っ掛けるバカはいないさ、それに狙われたら狙った事を後悔させてやるまでさ」
どうやら話はその方向で決まりそうである。
そして何より今日の鈴蘭はなんか恐ろしい。もう絶対に敵に回しちゃいけないな、と何度も思った。
そして当然ながら私には拒否権はないのだ。こういう時こそ憲法が役に立たなければいけないのに……。
まぁ、この人達に憲法の適応がなされるのかは正直微妙なところではあるが。
「はぁぁ~……」
何でこんな面倒臭いことばかりに巻き込まれるのだろう、もうそれこそが私の固有能力なのではないだろうか。
何1つメリットがないけれど……。
「……というかどうしてここに?」
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