第十一話
「人、じゃない? それは性格的とか道徳的な意味で、ですか?」
「違う、確かに人の形をとっているが根本的に生物学的に人間とは異なるということじゃ」
生物学的に人間ではない、にも関わらず人の姿をしている。という事はつまり妖怪あるいは幽霊に分類されるということだろうか。
そこまでわかっているという事はアマテラスは犯人に心当たりがあるのだろう。
しかもそれだけでは無い、私はアマテラスがこんなに慌てている様子を今まで見たことがない。
私が思っている以上に事態は深刻なのかもしれない。
「
「格闘家? だって被害者は切られたんじゃないんですか?」
「そうなのじゃ、姿形からして鬼龍院白夜には違いないはずなのじゃ……」
格闘家が刀を使う。そんなことがあるのだろうか。
いやそんな考えはきっと偏見だとは思うけれど、それでもどこか違和感が残る。
「そう鬼龍院一族は代々は拳法一筋じゃった。納得は出来んのじゃが、だとしても切った奴が相当な腕であるというのは確かじゃ」
切った犯人が鬼龍院だとしてもそうじゃないにしても脅威であることに変わりはないということである。
「それでその鬼龍院っていうのはどれくらい危険なんですか?」
接点がなかったのだからどんな人物なのかといった情報が何もない。このご時世情報の多さがものを言う、敵を知り味方を知れば百戦危うからずとも言う。
知っておいて損はないだろう、何より何とも言えない嫌な予感がするのだ。
というかそもそもどうしてこんな事になっているの?
「奴は妾達にとっては大したことないのじゃが、今の花撫にとっては脅威でしかないのじゃ」
まぁ、当然だろう、神様それも最高神よりも強いものなどがあるはずがない。というか今回の件は神の力でどうにかできないのだろうか。
「残念じゃが、それは出来んのじゃ。そういう決まりなのじゃ」
それもそうか、毎回毎回何かが起こる度に神が力を行使していては何も成長がない。
「……ちなみにもしも私が戦うことになった場合いの勝率はどれくらいなんですか?」
「限りなくゼロじゃ。逃げる方が賢明じゃ」
迷いなく神がここまで言う存在。鬼龍院白夜、無闇に関わらない方が良さそうだ。どうも命がいくつあっても足りそうになさそうな気配を背中に感じる。
とは言えこちらから関係を持たなければ今まで通り関わり合うこともないのだろうし、なるべく会うことがないようにしていれば……。
「……そうもいかんのじゃ」
「ど、どういうことですか?」
こちらから関わらなければ、接点を持たなければいいのではないだろうか。
「そう単純でもないのじゃ。何故やつはこの神社の周辺に出没しているのか、考えてみるのじゃ」
う~ん、まずもって用がないところにはわざわざ赴かない。
それは人間も妖怪も幽霊だって同じはず、つまり何らかの目的があるということ。そしてそれのためには神社の周辺に出没する必要がある。
いや、目的は神社周辺ではなくて神社自体?
「その通りじゃ。そしてより正確にいうなら花撫、お主が今回の標的じゃ」
「わ、私ですか?」
いや、なんで?
標的にされるような事なんて一切していない。目立つようなことも何もしてない。
というか逆に私が何をしたのだろう。
「確かに花撫が関わっているのではない、花撫という存在が大きく関わっておるのじゃ」
私は関わってはいないのに私の存在が関わっている。
全くもって理解が及ばない。
「それは一体……」
「そのままの意味じゃ。この世界において力を持っているがどこにも属さない存在、それが今の花撫の立ち位置じゃ。奴らは花撫を得るためにコソコソ神社の周辺を嗅ぎ回っておるのじゃ。その力を自分達の陣営に取り込むためにの」
どういうことなのだろう、今まで別にそれらしい前兆があった訳でもない。
特にこれといって目立ったことは本当に無いし、別に普通の巫女では無いだろうか。
そもそもどうして私を引き込む必要性があるのだろうか。
まずもってそこが最大の疑問である。ただの巫女を味方につけたとして何があるというのだろう。
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