第五話
その種類は多種多様だけれどもその力はとても強力であり並大抵の人間では扱うことは出来ない。
当然である、その力が使えてなおかつその力を認識できるのは仙人のみ。普段、人間が言う努力の何倍、何十倍あるいは何百倍もの時間と労力を
そしてそれは当たり前だけれども常人とは一線を画したものとなる。
一人の仙人でもとてつもなく強大な力を持っている。そして仙人の中でも強力な力を持つ仙人はより上位の力を扱えることになる。
その仙人達の総称が五仙人。五神通なるものに由来しているらしく、そこから引っ張ってきているという。元ある六神通から
大抵その力が強力過ぎる故に五仙人は人前には滅多に姿を表さないらしい。山や森の中で
そして何よりここにいる
「……どうしてこうなった?」
客間の畳の上に正座する私の太ももにはあろう事かその仙人の頭が乗っかっている。俗にいう膝枕というものを現在進行形で体験していることになる。
しかも膝枕をする側として。しかしそれが普通の少女ならまだしも相手は仙人だ、それも日本でかなり上位の。
何故か私は好かれているのだけれど、いやそれ自体は嫌ではない。むしろ嬉しいくらいなのだ。なんせ日本最高峰の力にこうして触れることが出来るのだから。けれど流石にこれはどうなのだろうかと思う。
「それは妾が一番聞きたいのじゃ」
女神様ですらため息の連発である。
さっきからこの屋敷では数多くのため息が溢れている。
これでは幸せも逃げ……って、つまりはそういうことなのか。
やっぱりここには来ない方がいいのかもしれない、厄介事と面倒事しかない。
「はぁ……」
思ったそばからこうしてまた一つ幸せが逃げるのだった。
「ふふ、私の憧れだったんだよ。一度はしてみたかったのさ」
そう言って猫のように私の太ももにゴロゴロと頭を擦る。
本当にそれが普通の少女ならどれほど良かったか、それが猫ならばどれほど癒されたのか。
でも、もう一度確認しておこう。彼女は紛うことなき仙人だ。
「……帰りますよ」
いくら仙人とはいえどもなんで好き好んでこんな変態と一緒にいないといけないのだろう。もはや一種の拷問である。
そもそもここに来るといつもこうなのだ。いい加減私も疲れてきた。無理やりに連れてこられたせいで神社の仕事がまだ完了していないというのに。
「わ、悪かった、ちゃんと話すから帰らないで」
それに誠意があるのかはさておき、やはり心を読めるというのは便利なことこのうえなさそうだ。
相手が何を考えているかが手に取るように分かるのだから。自分がどのように動くのが適切なのかわざわざ考えなくてもいいのだろう。
いや、だとしたら何で鈴蘭はこんな風に変な行動しかとらないのだろうか。私も心が読めればよかった。そしたらこんなに苦労しないのに。
「冗談でもそんなことを言うなよ。こちとらそんなに簡単じゃないのさ、分からなくていいことまでわかってしまうからな。正直プラスしかないほど甘くはない、まるで世の中さ。いいや、だからこその世の中なのかもな」
鈴蘭と女神様は顔を見合わせ苦笑いをする。
「でも、ある程度は自分の意思でカットできるじゃろ?」
「まぁそれも完璧じゃない。アマちゃんなら分かってるだろ」
今の会話がどういうことを意味するのかきっと私には一生かかっても分からないだろう、彼女達のように私は他人の心を読めるわけではないし彼女達のように永遠の時を生きるわけでもない。
「そう言うものですか……それで、今後話すにあたって私の太ももから退くことは?」
結局、あれから女神様と話している間であっても私の太ももには仙人の頭が鎮座している。そこにいるのが当たり前だと言わんばかりの得意顔でスリスリと顔を私の太ももになすっている。
「ないな、それはない。それよりも今日はなんか冷たくないか、
きっと何がなんでもそこから退く気がないのだろう、恐ろしい速さの即答だった。もうあれだ、この状況を気にしたら負けだと思う。
というかそう思わないと乗り切れない。
「そんなことないですよ。いいからちゃっちゃと話してください」
「……よ、よし、本題にはいるぞ」
何か慌てた様子で私の太ももから退く。さっきまでの決意はどこへ行ったのだろう。一周回って不気味である。
しかしこれがしばらくするとまた膝枕を要求してくるのだから手に負えない。
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