第14話 日常


早朝5:00

漸く太陽が登り始めた海辺付近を走る影が一つ。

レイアは道場の稽古が始まると同時に自分はとにかく早急に体力をつけるべきだと考えた。

よって朝起きたらまずジョギングをし、家に戻ってからも腹筋や腕立て伏せなどのトレーニングをし、筋力をつけ、身体を作り替えることに勤しんだ。女の身である自分だからこそ、男と対等に渡り合い、戦うための身体を持たなければ何も始まらないのだ。


7:00

家に戻りシャワーを浴びた後、朝食の準備と前日に仕込んでおいた材料で昼食用のお弁当を作る。キュステの元で世話になる以上はとレイアは食事の用意などの家事は率先して行うようにした。


7:30

キュステと共に朝食を取りながら、その日の予定について話し合う。


8:00

近所のパン屋さんで一時間だけだが接客業のバイトを行う。


9:10

パン屋をでてアルフォンド家の道場に向かう。


9:40

着替えを済ませ、稽古の開始時間まで準備運動をする。


10:00

武術・体術稽古開始。レイアは初心者なので基礎コースにて武術・体術の基礎を学んでいく。


12:00

昼食休憩。道場の先輩達と世間話をしたり、アドバイスを頂いたりしながら昼食を食べる。時間があれば上級コースの人物に指示を仰ぐ。


13:00

剣術稽古開始。武術・体術稽古と同じく基礎を学んでいく。


15:10

着替えを済ませたら一度帰宅し、夜ご飯の仕込みと、余裕があれば明日の昼食の仕込みもしておく。


16:00

近場の居酒屋で接客及び裏方のバイトをする。


19:00

バイト終了。家に帰りキュステと夕食を取りながらその日あったことについて話す。


20:00

トレーニングとジョギングを終えたらシャワーを浴びる。


21:40

寝る前に前日に学んだ軍知識・魔法知識の復習と明日に向けての予習を行う


22:10

就寝



以上がここ最近のレイアの一日のスケジュールである。

道場が休みの日は午前中はアルフォンド家の書庫に篭り軍知識について学び、午後はシエール家で十八時までひたすら魔法書を片手に魔法の修練に励む。道場が休みの日は夕方のバイトは行わずにそのまま家に帰りキュステと共に夕食をとる。その後のジョギングの際に人気のない海辺で昼間に行えなかった火属性と土属性の魔法を練習する。そして家に戻りトレーニングを終えたらシャワーを浴びてそのまま眠る。

道場に通いアルフォンド家やシエール家で軍に入る為の知識と技術の習得に励む合間に、それぞれの家とキュステさんに払う為の金銭をバイトで稼ぐ日々は目まぐるしく過ぎていく。

しかし週に一度の休みはキュステさんと共にゆっくり過ごしたり、街を散策したりと有意義に過ごし、身体を休めるように務めた。



そしてアクティニア王国が滅んだ時はまだ肌寒く春の訪れを待つばかりだった季節は巡り、初夏を迎えようとしていた。

その頃にはレイアは見を見張る速さで成長していき、中級に上がり、上級への昇進も目前に控えていた。









「打ち合い、始めっ!!」


「ハァアッ!!」


「ーーくっ!!」



カッ


カッ


カンッ!!



この日アルフォンド家の道場では一対一の打ち合い稽古を行っていた。

レイアは自分よりふた周りは大きい立派な体格を持った相手を見て打ち合いをしたら押し負けると見越した。

よって時間をかけずに勝負を決するために持ち前の身軽さを用いて始まると同時に相手の懐に飛び込み速い剣戟で相手に先制攻撃を仕掛けた。

然し相手はそれを防ぎきり激しい打ち合いが続いた。



「らぁあああっ!!!」



カァンッ!!



激しい打ち合いの中で素早く飛び退き間合いをとったかと思うとすぐさま間合いをつめ、下から斜め上に木刀を打ち込み相手の木刀を弾き飛ばした。

弾き飛ばされた木刀が高い音を立てる。


一瞬の静寂が道場を包む。



誰もがレイアの流れような美しい剣技に見惚れる中、一足先に我に返った審判が勝敗を告げる。


「し、勝者、レイ!!」


ワッと拍手喝采が響くと同時に稽古を見ていた者達がレイアの元に集い口々に今の剣戟に賛辞を贈る。


その日、レイアの稽古が終わると同時、アルフォンド家の道場は俄に騒がしくなった。




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