第12話 軍に入るために その2



「さて、じゃあまずは魔力量を調べようか」


インベルさんがそういうと、水盤のような物を準備をしていた召使いさんが運んできた。かなり大きい。縦横幅1メートルはあるものだ。


「随分大きいですね……?」


「魔力量を測る為だけの道具屋だからな。そういうもんなんだ。使い方は手を翳して、特に属性を意識せずに魔力を流し込むだけなんだが……出来るか?」


「やってみます」


その説明だと、魔力量を誤魔化すのは難しそうだな……とりあえずあまり流し込み過ぎないように、気持ちかなり少なめに流すイメージでレイアは手を翳す。感覚は水魔法を使う時と似ている。そこに水のイメージを加えないだけだ。


すると不思議なことに中心から徐々に波紋が広がっていった。驚いてそれを見ているうちに少し気がそれてしまった時、アンナさんが大きな声を上げた!


「凄いわ!!波立った!!!」


ハッと慌てて気を引き締めるが、既に遅く、水面には大きな波が広がっていた。


「も、もう……それぐらいで良いだろう」


目を見開いてそれを見ていたインベルさんがもうやめていいと言ってくれたので手を下げる。しまった。今更遅いが周りの反応からしてやってしまった感が凄くある。

後悔さているとインベルさんが口を開いた。


「凄いな。この水盤の水面は魔力の量が多ければ多い程変化を表す。水面が波立つのは久しぶりにみた。レイはかなりの量の魔力を持っていると考えて良いだろう」


「えっと、それってこの国では珍しいのでしょうか?」


「そうだな……軍でも水面を波立たせられるぐらいの魔力持ちは2割いるかいないがといった所だな」


レイアは表面上は少し驚いた様にみせるに留めたが、内心は冷や汗だらけだ。不味い。属性では気をつけなければいけない。


「とりあえず、属性検査に移ろうか」


インベルさんがそう言うと次は丸い水晶のような物が5つ運ばれてきた。


「それぞれ基本属性の火・水・土・風の属性を調べるものと、一回り大きいのが光や闇などの特殊属性を調べるものだ」


「わざわざ一つずつ調べるのですか?」


「貴族とかだと最近はもっと新しい一つで全ての属性を調べられるものを使用している所が増えたようだが、我が家はもうずっと来れで知らべているな。調べられれば何でも良いし、魔力消費量がずっと少なくて済む。それに人によっては属性をいくつか持っている奴もいるから確実だ」


レイアも成程と納得する。確かに文献では人によっては属性を2つ3つ持っている人や多い人は5つ持っている人もいると記載されていた。


(でも、これなら魔力を流さなければ属性を持っていないと誤魔化すことができる)


レイアは内心で大分ほっとしていた。魔力量だけならともかく、闇属性以外全ての属性持ちはどう考えても異常だろう。成るべく目立ちたくないレイアにとってこの検査方法は大分安心できるものだった。


(とりあえず水属性と正反対の火属性は持ってないと見せるべきね。水属性以外は……とりあえず今まで何度か使ったことのある風属性と光属性だけを持っていることにしよう)


それぞれの属性をイメージしながら順番に手を翳すように説明を受け、まずは水属性の検査をしてみることになった。手を翳し、目を閉じて水をイメージしながら魔力を流す。


「まぁ……」


ターニャさんの感心したような声につられて目を開けると予想通り、水晶の中に透明度の高い水色の光が浮かび上がっていた。


「透明度からみるとかなり相性か良さそうだな。確かに言っていたとおりかなりの水の加護を受けていると考えられるだろう」


インベルさんは感心したように言った。しかし私はそれどころではない。問題は次からだ。

レイアは火の属性の水晶に手を翳すした。目を閉じるが。何も考えない。無心になるだけだ。暫くしてインベルさんが「火属性の適正は無いようだな」と言ったので、安心して手をおろした。正直魔力を流すよりもこっちの方が精神的には緊張するし疲れる。だが無心でいれば水晶は反応しないということがわかったので大分気分が楽になった。

その後は順調に検査を続け、最終的にはレイアが望んでいた通り、水・風・光の三属性持ちという結果で終えることが出来た。


「大量の魔力に三属性持ち。レイは魔法部門でも期待出来そうだな。だが、ソリタニア国においては軍の本質はやはり剣術と体術だ。気を抜くなよ」


インベルの厳しい言葉にもレイアは勿論ですと返事をした。インベルのその態度にキュステさんはやれやれと言った顔をしたが、話を変えようと声を出した。


「とりあえず、レイの魔力量や光と水といった特殊な属性から考えると、魔法についてはやはりシエール家に任せた方が良さそうですね」


「ああ、シエール家には俺から連絡しておこう。となると、道場での稽古は明後日からにして、明日にでも挨拶に言って来るといい」


「何から何まですみません……。ありがとうございます」


レイアは深くお辞儀をして、この日はそのままキュステと帰路についた。


かなり緊張はしたものの、上手くいってよかった。アルフォンドの一家とも上手くやっていけそうだ。しかし、明日には今度は別の家への挨拶……。正直緊張続きで疲れるが、弱音を履いてもいられない。レイアは明日に向けて新たに気を引き締めた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る