台湾の悲劇


台湾の悲劇とは潤がまだ5歳の時、お父さんとお母さん、妹二人を含む家族と共に中国、アメリカ、日本、イギリス、台湾、フランス、ドイツなどの国が共同で開発した新型の短距離弾道ミサイルの発表会が行われるということで招待され、潤のお父さん紘はその当時魔法省大臣を務めており、外務大臣の山野久憲夫婦と一緒にミサイルの視察を兼ねた家族旅行をするために台湾へと向かった。


「もうすぐ着くの?」


「うん、そうだよ。飛行機でだいたい2時間ぐらいだね。」


「案外早く着くな。紘くん、台湾の琳魔法部長との会談が終われば、家族旅行ゆっくりとするんだよ。」


「ありがとうございます。山野さんも曹外交部長と会談されるんですよね。」


「そうなんだよ。共同談話を発表しないといけないからね。大変だよ。」


「ちょっと2人とも仕事の話は後にしてよ。せっかく、仕事を休んで台湾に行くんだからね。」


「済まないね。どうもお年寄りは若い人と話をしたくなってね。」


「台湾の地に着いたらこの子達の服を買わないとね。」


「小さい子がいると賑やかでいいね。」


「可愛いね。2人ともスヤスヤ寝て」


ピンポンパンポーンと音がなり、アナウンスが流れた。

「 この飛行機は、ただいまからおよそ15分で台湾桃園国際空港に到着する予定でございます。

ただいまの時刻は午前7時40分、天気は晴れ、気温は22度でございます。

着陸に備えまして皆さまのお手荷物は離陸の時と同じように上の棚などしっかり固定される場所にお入れください。

また、まもなく、免税品の販売を終了いたします。

ご希望のお客様は早めに乗務員にお知らせください。

まもなく前方のスクリーンで入国案内と書類の記入方法をご説明いたします。

入国に必要な書類をお持ちでないお客様は、乗務員にお知らせください。

この飛行機は日本航空823便でございます。」

ピンポンパンポーン 機内アナウンスが終わり、いよいよ台湾の地へと近づいていく。

そして台湾の地へと降り立った更屋敷家と山野家はミサイルの発表会に出席するために会場となる場所へとタクシーで向かう。

30分程で会場となる場所に到着した。


「ここがミサイルの発表会場ですか。割と大きいですね。」


「各国の外相や魔法相が来るからね。良いところを選んだんだろう。」


「なるほど それにしても一般の人も見られるようになってるんですね。」


「国民からの疑念を向けられないようにしたいんだろう。どこの国も生き残るのに必死さ。」


「そうですね。」


「私は曹外交部長に挨拶してこようかな。」

山野外相は台湾の外交トップの曹部長に挨拶へ向かってると突然、大きな揺れが起こった。

その揺れはしばらく続き、ぴったりとおさまった。


「なんだ? 地震か? 」


「山野外相 ご無事ですか?」

曹外交部長のSPが駆け寄って来た。


「済まないね。大丈夫だよ。曹外交部長はどこにいらっしゃいますか?」


「こちらにいます。ここは危険なので逃げましょう。」

SPに手を引かれ、会場から少し離れた建物に避難することとなり、SPの一人に頼み事をした。


「紘魔法相があそこの会場にいる。彼らの家族と私の奥さんもいる。助けてくれないか?」


「分かりました。すぐ向かいますので外相はこのまま避難場所までSPと一緒に向かってください。」


「分かった。頼んだよ。」

山野外相はSPに誘導されていった。

一方、会場にいた紘たちと山野外相の奥さんは一緒に避難場所へと向かっていた。


「なんなの? あの揺れは」


「多分、地震ではないと思う。あの揺れ方はおかしい。」


「お母さん 怖いよ。」


「大丈夫よ。よしよし」


「ぐすん…」


「うぇーん うぇーん」

妹たちも泣き出してしまった。


「ちょっとごめんね。」

潤から手を離した桃花は妹たちをあやしながら歩いていく。


「ちょっと待ってよ… ぐすん…」


「よしよし、大丈夫よ。私が守ってあげるからね。」

山野外相の奥さんである文枝に抱きかかえられてそのまま避難場所へ走っているとまた大きな揺れが起きた。

すると超大型ディザードであるアレクサンドルクナが現れ、新型の短距離弾道ミサイルに向かって走り出した。

現場からその情報が送られ李国防部長は軍幹部と対応を協議し始める。


「あれはアレクサンドルクナ なんでこんな所に!!」


「警戒態勢はどうなってる?」


「アメリカ海軍が壊滅したそうだ…」


「すぐに全エリアに避難命令を発令 台湾軍総力をあげて対応 一般市民と来賓を優先に日本へ輸送するよう命じる。」


「はい!!」


「もし、大事になれば外交問題になりかねない。」


「各国の外相や魔法相などの政府高官クラスが多く集まるこの日にアレクサンドルクナが現れるとは…」

ミサイルの発表会場では警備に当っていた軍や警察などが銃撃を開始 一時的に足止めをすることに成功するもアレクサンドルクナを結果的に怒らせてしまい、大暴れさせてしまう。


「やばい。アレクサンドルクナを怒らせてしまったようだ。」


「隊長 どうしますか? 」


「やむを得ない。全軍一斉後退 一般市民を守りつつも後退する。」


「はっ!!」

台湾軍と台湾警察の活躍により少しの間だけではあるが時間を稼ぐことに成功。

各国の高官クラスは日本へ輸送され、日本も受け入れを表明した。

紘たちはなんとか避難場所に到着 そこからカモフラージュの魔法をかけた船に乗って日本に帰国することとなったのだが、定員オーバーのため、更屋敷紘は台湾の地に残って別の船に乗ることになってしまったのだ。

それがお父さんとの最後になるとは夢にも思わなかったのである。


「お母さん お父さん大丈夫かな?」


「うん、私と妹たち、そして文枝さんは乗れたけど… お父さんは定員オーバーだったからね。仕方がないよ。」


「そうね。うちの主人も残ってるみたいだし心配なのはみんなそうよ。」


「お父さんなら大丈夫よ。多分…」

家族と離れて台湾の地に残った紘はアレクサンドルクナを討伐するため、台湾軍と台湾のマギサズと協力して事にあった。


「アレクサンドルクナは新型の短距離弾道ミサイルのエネルギーに釣られてここに来たと考えるべきかと思われます。」

そういうのは魔法部次長の田永江 元々はディザード対策処の長だったが、次長に昇格したそうな(?)


「なるほど 」


「もし、アレクサンドルクナが新型の短距離弾道ミサイルを食べようと噛んだら大爆発を起こして台湾だけじゃなく東南アジアにも被害を及ぼす可能性もあります。」


「それは避けなければならない。大惨事にならないようにしなければいけないが…」


「悠長なことは言っておられないからな。どうするかだけ決めて事にあたるしかあるまい。」

凶と出るか吉と出るかはやってみないと分からないだが、この決断があの未曾有の大惨事へと発展してしまうことになるとは誰も予期していなかったのである。

次回、台湾の悲劇2


ここからは解説になります。

11年前に起きた台湾の悲劇から今現在起きている様々な異変

これは10話から11話にかけて異変が起こりつつあるというお話の中でアルファとベータと呼ばれるものがヨーロッパで現れたり各国の亡命政府が陰謀を企てたりと異変が起きていますがその背景には色々な国の思惑も見え隠れしていますよね。


舞台背景について軽く説明していきます。

台湾の悲劇が起きる前の時は中国、アメリカなどの主要先進国は健在でディザードの進行を遅らせることができていたのですが、各国においてコストの問題や人的資源(特に成人男性)などの諸問題が深刻化し苦境に立たされ、アメリカ政府はマギサズの軍事利用を検討も視野に動くことを表明せざるおえない状況にまで追い込まれていた。

もちろん、日本も例外ではなくかなりの成人男性が戦地に送られ儚くも散っていった。

この当時、マギサズの軍事利用や兵器として扱うことを禁止した国際条約により守られていたため、各国的には軍事利用をしたいがやれば批判の的になりかねない。


そのため、アメリカ陸軍やアメリカ政府の上層部はあることを思いつく。

(発覚後、非人道的な行為だとしアメリカ陸軍は解散 各国の亡命政府にいた軍はほとんど全てがアイランドパトロールに吸収される形になった。アイランドパトロール以外の軍隊は事実上いなくなることとなる。)

それを実行し、研究開発が繰り返し行われた結果、アルファとベータが誕生するも兵器としての運用テストを行う日に台湾の悲劇が起こりテストが中止となり以後、放置されていたのである。

この流れは小説本編でも詳しくやるのでへーこんな風なんだなと思っていただけたら幸いです。

次回もお楽しみに

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