第5話 お仕置き
何を言っても無駄な桐崎七瀬に俺は無視という選択が最適だと判断した。彼女はベット腰掛けているので俺は机に向かい、課題をすることにした。流石に人の勉強を邪魔するほど常識の無い奴では無いだろう。
すると全く相手にされなかった彼女はやはり黙った。そのまま黙って帰ってしまえば良かったが、課題を進めているある時、肩に手を置かれたのを感じた。
「肩凝ってない? 揉んであげる」
ため息が出た。
「髪型カッコいいね」
途端に課題が頭に入らなくなった。うざすぎる。
「なんか悩み事とか頼み事があれば言ってよ。だって私は康太の彼女だもん。あっ勿論空を飛ぶとかそういうのは──」
「うるせーな」
立ち上がり、振り返り様に彼女を見下ろす。結局こいつは俺の中身なんて見てないんだ。いや、確かに俺に魅力は無いが、こいつは見ようともしないのだ。
「いつからお前は俺の上になった。頭が高いんだよ」
彼女はビクッと肩を震わせた。そして俺は一歩下がった彼女を睨むように見下ろす。すると負けずに彼女もキッと睨み返してきて、口を開いた。
「な……何? 付き合わせてあげてるの私なのに何その態度! 私のおかげで康太は人気者になったんだよ?」
「は? 何言ってんだお前」
彼女に詰め寄ると、同じように彼女は引き下がる。同じ距離を保ちながら彼女は壁に追い詰められた。
「痛っ」
ドンっと彼女の背がドアにぶつかり、俺はドンっと彼女の顔の横に手を付いた。心なしか肩を震わせているようにも見える彼女を冷たい目で見下ろす。
「帰れ」
「……やだ」
やはり今の彼女は余裕がなさそうだ。そう……この顔が見たかった。
「そうかじゃあ」
「──っ!?」
余っていたもう片方の手で、彼女の片方の乳房を乱暴に掴んだ。目を見開くなり、慌てて両手で俺の胸を掴んでる腕を掴み、引き剥がそうとしてくる。
「やだっ! やめて! 私にこんな事していいと思ってるの!?」
「じゃあ帰れよ」
「……」
急に黙り始めた。俺は胸を掴んでいた手を離すと、彼女は安心したように手を下ろした。だが別に俺はやめたわけでは無い。俺は再び手をあげると人差し指だけを出し、彼女の胸の中心を付いた。
「ひゃっ。ちょっ……!」
そんな声を漏らし、彼女は顔を青ざめさせた。このことを彼女が学校の人々や先生に言えば、俺は退学になるだろう。そんな危ないことをしていると自覚はあるが、何故か今は止めることができなかった。
「帰れよ!」
「……やだ! 付き合ってるって認めるまで帰らない!」
なんだよ、付き合ってるかどうか心配してたのかよ。面白いな。だがもう今の俺にはこいつが憎くて憎くてしょうがなかった。
「ああそう」
「何っ──うっ!」
あの時と同じように彼女の胸ぐらを掴み、横のベットに突き倒した。床に足をつけたまま、布団に上体を埋れさせているなんとも無防備な桐崎七瀬。そのまま近づいていくと、目を見開かせながら顔を上げて、やめてと言わんばかりに震えている。
「こんなの私の康太じゃ無い!」
「俺はお前の康太じゃなければお前の知っている康太でも無い。帰れ」
最後の忠告だ。俺がこれから何をしようとしてるのかは分かっているはずだ。俺の忠告を破ればもれなく彼女はどうにかなるだろう。
「……や……だ」
「分かった」
そういう事だ。
──
三十分後、彼女は涙を流しながら眠っていた。レイプ後のようにぐったりしていて、そんな彼女を見て、俺は凄まじい背徳感を味わった。そう……俺は彼女にお仕置きをしたのだ。
「流石にやりすぎたな」
本当に彼女は気を失ってるだけなのだろうか? 死んでしまっているのではないだろうか? 流石に今の彼女の姿は悲惨すぎるので、俺はとりあえずと彼女の乱れた服と髪を整えるのであった。
そのまま何事もなかったかのように桐崎七瀬を放置して、机にて課題を進めていると、彼女は目が覚めたのか立ち上がったのを背後で感じた。持ってきた荷物を手に持ったようで、そのまま黙って部屋を出て行った。足取りが不規則で、とぼとぼとしていた様子だったので笑うのを堪えるのがやっとだった。
桐崎七瀬は帰って行った。
そして課題を終えて、夕飯を食べに俺は部屋を出た。
「康太、はいお土産」
廊下で姉──紗香から出会い頭にお菓子を投げ付けられた。
「いや、そこらの店に売ってそうなうまいぼーを土産って言うのはな。まあ、ありがと姉ちゃん」
「ってかあんた、よく見たらその髪型どうしたの、かっこいいじゃん」
「あーね」
するし大学生の姉は、ニヤニヤとした視線を送ってきた。
「それよりさぁ……どうやってたぶらかしたか知らないけどさ、あのメチャクチャ可愛い子とどんなプレイをしてたの?」
「──っ!」
桐崎七瀬と行っていた行為がバレていたという事実に思わずむせてしまった。姉は確かに隣の部屋であるが、そこまで声が漏れていたとは。
「エロいねぇ康太」
「うっせ。もう飯食うからどいて」
「お父さん来る前に髪型戻しときなよー」
「分かってるよ」
父は、世界中の貴族の宿泊を専用とする天海ホテルの社長を務めている。そんな有名な父の息子が俺であることを知ってる人は、学校でもそう少なくない。父は毎日俺が登校した少し後に出勤している。そして帰りは決まって9時ごろだ。
そんな父は、高校生のスマホ所持は毒だと口を酸っぱくして言われて、さらに部活は勉強の妨げだとやらせてくれない。まぁ、そのおかげで学年の上位には君臨させてもらっているのだが。
まだ全然時間はあるので、夕飯を先にして風呂で治そうと決めた。
学年一の美少女に裏切られたので新しい人生を歩みます カクダケ@ @kakudake
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