8.1話 初めての戦闘

 

 僕は魔剣ティルヒィングを片手に洞窟の出口へと向かった。これでやっとこの世界を間近に見る事が出来ると思うと胸が高鳴る。


 でもそんな僕の期待は見事にすぐ裏切られた。出口には黄緑色の人間のようなモンスターがわんさか集まっていたのだ。僕は即座に大きな石の後ろに隠れた。どうやらモンスター達を倒さなければ出られなさそうだ。しかしあれは...


【あれはゴブリンの群れですね、見事に出口を塞がれているようです】


 あれ?おかしいな。今ティアの声が聞こえた気がしたのだが気のせいか?だって今ティアは魔剣ティルヒィングとして僕の手に収まっているんだから声は出せない筈だ。さすがに異世界でも金属は喋らないだろう。


【ご主人様?聞こえてますか?】


 また幻聴かな?ティアの少し怒った声が聞こえた気がしたのだがな。

 でも確かに聞こえるているが...?てかティア性格変わったな、特に一人称が。しかも語尾とか色々と改善されてる。こっちの方が話しかけやすいな。


【ご主人様、私です。ティアです。ご主人様には伝え忘れていたのですが、私は魔剣の姿になってもご主人様の頭の中には直接私の意思を送り込める事が出来ます。しかし、ご主人様は小声でも声に出して頂かなければ私へつたえることは出来ません】


 つまり僕は...そうか、じゃあ決して僕が幻聴を聞いていた訳では無いのか。確かにこれは便利だな。では早速...


『ティア、ゴブリンはLv.1の僕でも討伐出来るのかな?』


 僕が小さな声で聞くと、直ぐにティアが返事をくれた。


【はい、ご主人様がお持ちのスキルがあれば簡単かと思います。】


 そして僕はある事に気づいた。ティアのステータスを見ていて気付いたこと2つ目。ティアのスキルの 調査のレベルが僕のより高い。更にティアの持つ勇者(闇)の加護で更にレベルが上がっている。


『そうだ、ティア。君は僕よりスキル 調査のレベルが高いから僕のスキルを一つ一つ説明してくれないか?僕はまだ自分のスキルの性能でさえ確かめられていないんだよ』


【はい、良いですよ。今お伝えします】


 気持ちいい返事が帰ってきた。そして僕はやっとの事で僕の殆どのスキルの効果、及び性能を知る事が出来た。ティアの説明の中身で重要なのはこんな感じだった。中々使えそうなスキルを持っているようで安心だ...


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 «鷹の目»

 飛び道具で狙った物に必ず当てることが出来る。つまり弓が100発100中ってこと。


 «隠密»

 自らの気配を消す。

 

 «魔法強化»

 魔法の威力が上がる、更に魔法から受ける攻撃の威力が半減する。


 «気配察知»

 周囲の気配を探る。取り敢えず今回は役にたった、ゴブリンの総数が分かったし。


 «幸運»

 運が良くなる。多分このスキルと恩恵のおかげでこんなにスキルを習得しているのだろう。


 «Reincarnation»

 意味は転生。勇者や魔王が使うような回復魔法。どんなものでも時間を超えて回復してしまう。


 «風刃•闇»

 闇属性の魔法で作られた風の刃。威力は竜族のしっぽで証明済み。


(その他は既に説明しているので省略!!)


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 うん、改めて思うとスキルって偉大だ。確かにこれだけのスキルがあればLv1の僕でもゴブリンの群れを討伐出来る気がするな。しかも忘れてはいないだろう、僕は今この魔剣ティルヒィングをもっているのだ!!


 油断は禁物、そんな事は百も承知だ。うん、油断大敵~ 油断大敵~。


 やばいです。ゴブリンの群れ相手に負ける気がしないぞ、本格的に。


 ......いや待て、何か引っかかるな。


 そういえば、転移する時、アズリエルが何か言っていたような気がする。確か僕はこの世界で自由に生きることを許すが、人間を勇者として三種族戦争?に勝たせなければならないらしい。そこで考えてみよう。普通に考えたら三種族とは人族、魔族、そして竜族の3種族だ。

 そして、ここは竜族の巣の筈だ。さっきここから飛び立った筈のドラゴンは何故ゴブリンを襲わなかったのか?何故竜族四天王が住む入口に竜族ではなく魔族の一員であるゴブリンの群れが守っているのだ?この事は何を意味している?

 その時、僕の頭の中にある一つの考えが浮かび上がった。それは三種族戦争を一気に終わりへと加速させる考え、だ。でも僕は直ぐに否定した、だってそれは人間にとって喉元に毒刃を押し付けられている様な物だからだ。絶対に有り得ない。有り得てはならない。


 魔族と竜族が人間相手に手を組むなんて、ね...


 8.1話END

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