7話 ティアと初代勇者

 勇者(闇)の加護?なぜ魔剣であるティアがそんな加護を?


 そんな事よりティア、君はさっき初代勇者が勇者(闇)だったって言っていたよね、でもその事実を竜族四天王であるギオラが知らなかった。どういう事だ?うん、本人に聞いてみよう。


『それで、ティアは初代勇者と知り合いなのか?』


 ティアは首を縦に振った。ほう、知り合いなのか。それは凄いな。


『じゃあティアは何故勇者(闇)の加護を持っているんだ?』


【ご主人様、妾は初代魔族四天王の筆頭が最初の主でした。しかし、勇者様が魔王城に攻め込んで来た時に彼は勇者様を止めるため戦いましたが、殺されました。結局彼の足止めは無意味だったのです。魔王が敗れた時でした、妾が勇者(闇)の加護をこの手に受け取ったのは。初代勇者様は魔王城で奴隷として働いていた者達全員に加護を与え、魔王城にいたからと蔑まれないように身元を証明してくれたのです。つまり初代勇者様はご主人様と同じ闇属性の勇者だったということです。】


 僕は素直に感心した。そして同時に気になった、いや気になってしまった。この子今何歳なんだ?


『ちなみに僕は何代目の勇者なのかな?』


【妾が知っている情報では確かご主人様は五十六代目かと】


『もうひとつ聞きたい、勇者(闇)が僕の職業だけど他にも色々種類があるのか?』


【その通りです、ご主人様。この世界ニブルヘイムには合計で6種類の属性があり、勇者はその中から1つ属性を女神様から頂けると存じております。それらは魔法の属性でもあります。炎、水、土、風、闇、聖の6つが種類です。魔法には無属性魔法もありますが勇者にはありません。客観的に見ると炎、水、風、土が多いと思います。今までで闇属性を持っていたのは初代勇者様とご主人様、貴方だけです。闇属性の勇者は既に伝説化している様な存在です。ステータスを見せる相手は選んでくださいね?ちなみに妾はご主人様と同じ闇属性の魔法を使えます】


 そうか、ステータスを見せる相手は選んだ方がいいのか。てかこの際だから言うけど、この魔剣捕まっていたわりには情報を色々持っているな。一体どんな情報網を持っているんだ?さすが魔剣だ。


【ご主人様?分かりにくかったですか?】


『いや?そんなことは無いよ。ありがとう。それよりティア、早くここから出なければならないのではなかったか?』


 その時、みるみるティアの顔が青白くなっていった。


 あ、そういえばこの世界に転移してから人間と話したのはそういえば初めてだ。竜族とは話したが身体の大きさに差がありすぎてやっぱり話すのは怖いし、かなり緊張するからな。


【そ、そうでした。妾は竜族に囚われていたのです、また見つかると捕まってしまうかもしれません。ご主人様、早く逃げましょう!!】


 そういうとティアは僕の手を取り洞窟の外へと走り出した。小さな女の子に手を引かれて走っていく僕、うん。周りに誰もいなくて良かった。誰かに見られていると思うとティアのご主人として恥ずかしい。


 走り始めて約1時間、やっと遠くに光が見えた。多分あそこから外へと出れるな、やっと。その時僕はある事に気づいた。てか僕はなんで今まで気付かなかったんだ?


 そういえばコイツ全裸じゃん!!


 全裸の小さな女の子に引かれていく男。町には絶対入れてくれない。でも他に手が...あ、忘れていたがティアは魔剣 ティルヒィング。魔剣になってもらえばそれも解決だな。てかティア足速いな、僕はもう疲れたんですけど?


『ティア、ちょっ、ちょっと一旦ストップして』


【はい、ご主人様。でもちょっとだけですよ?直ぐこの洞穴から出ないと竜族と戦う事になってしまうかもしれません】


 ティア、なんでこんだけ走ってなんで息切れしないんだよ。


『ティア、お前そんな格好で人間の町へ行くつもりなのか?』


 そう言い終えた時、ティアの顔が段々と赤くなっていった。うん、確かにしょうがないけど...人間の町には色々と変な人もいるしな、さすがに一糸まとわないってのは良くない。


『そういう事だからティア、魔剣になってくれないか?』


【確かに、そうですね。盲点でした。申し訳御座いません、ご主人様。今魔剣へと変身しましょう】


 ティアは膝を地面に付け、彼女の両腕を頭の上に祈るように持ち上げた。邪悪な黒い霧のような物が彼女を包んでいく...


 次の瞬間、黒い霧が晴れた。そこには確かに魔剣 ティルヒィングが浮いていた。凄い、強そうだ。前見た時はスキル あやつり人形を使われていたからな、意識があまりしっかりしていなかったからしっかりと魔剣ティルヒィングを見ていなかった。早く使ってみたい!!


 そして魔剣を持った僕は出口へと向かった。


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 〔神界内 転生/転移神アズリエルの部屋〕


<へ~、彼は中々上手いことやってるじゃあないですか。もう魔剣なんて手に入れちゃって、世界に数えるほども無いんですよ?そろそろあの子も召喚しますかねぇ?まあ、そういう事で魔王アキラを召喚しますか。>


 アズリエルの目の前にあった魔法陣が光り始め、数秒後には一人の男が立っていた。まず彼女の目に入ってきたのは長くて黒い髪とがっしりした筋骨隆々の身体だった。


<突然こんな美女が居る所に呼び出したのは謝るっすけど~、転移拒否だけはやめてくださいねェ♡>


 [くっ...ここは?俺は確か柊と殺し合っていたはずだが?]


 その時、アキラの頭の中に彼が殺された時の記憶が戻った。周囲の圧が倍増する...


 へぇー、これが最強クラスの魔王Lv. 1か。確かにこれは強いっすねぇ。これなら面白い物が見れそうです〜♪


<貴方は四葉柊に負けましたね、彼を殺したいですかぁ?殺したいなら方法がありますよ?>


 彼は驚いたようにこっちを見た。いや、これは睨みつけられたと表現するのが正解か。


 [その方法とは?]


<四葉柊は今異世界で勇者として魔族と戦うことになっています。貴方もそこに魔族の王、魔王として転移させて上げましょう。でもぉ、一つ問題があるんですけどぉ、柊ちゃんは記憶を失っているんですよ。それでも良いですか?>


 [当たり前だ。俺を裏切ったアイツを殺すためなら俺は、いや我輩はなんでもやる!!]


 アズリエルは返事を聞くと体をくねらせた。息遣いも荒い。


 [何をしている...?早く俺をあの世界へ送るが良い。さっさとアイツを殺す]


<ハアハア、興奮してきましたヨォ?いいでしょう、今すぐ送って上げますよ⤴︎︎>


 アズリエルは彼女の両腕を高々と上げた。アキラが立っている魔法陣が再度光り輝き始める。


 [シュウ、待ってろよ。俺を裏切ったお前を直ぐ殺しに行ってやるからなァァァ!!]


そして海藤 明、アキラは最凶の魔王として転移された。


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