6.1話 呪われし魔剣

『ぎゃぁあぁーあ?...あれ変だな、僕はまだ生きてるぞ?しかも思った以上に元気だな、意外だ』


 そう、僕はなんだかんだでティルヒィングを持って生命力を吸われた感触はあったのに死ななかった。あれ?すぐ吸い尽くされて死んじゃうんじゃないの?という疑問が頭の中を駆け抜ける。


【驚いたぞ、人間! まさか妾が人間の生命力を吸って相手が倒れんとは...竜族に長く捕まっておったからの、体がなまっておるのかもしれん】


 え?何この声、かわいい。でも周りに人はいない、もしかしてこの剣が今僕に話しかけているのか?


【妾の名はティルヒィング。鉄を容易く切り、狙った物を外さないという魔剣じゃ】


 色々とツッコミたいけどまずはこれを聞かなきゃ、何故僕はまだ生きているのか?そしてティルヒィング、今何歳?明らかに聞こえてる声がめっちゃ幼いんですけど。でもそんな事聞けるわけないじゃん。だってロリッ子...いや、(ロリ声を発している)魔剣ティルヒィング様が僕から吸い取った体力、約2000HPだよ?そこで僕はこう聞いた。


『魔剣ティルヒィング様、何故僕はまだ生きているのでしょうか?』


【そうじゃの、それは単純にお主の生命力、いや体力が妾の必要な量を上回っていたのだろうな。普通の人間なら数分で死んでしまうのにの、それにしても悔しいの〜、妾のようなインテリジェンスソードが人間に仕えることになるとは...】


 ⁉︎、どうやら僕の頭がオーバーヒートしたようだ、異世界って疲れるな、本当に。よし、とりあえず整理しよう。えーっとまずこの剣は人格があって、自分の事をインテリジェンスソードと言い、どうやら僕がいつのまにかこの剣の主人になってた。うん、絶対に異常だね?さすが異世界だ...


 普通にどうしよう?


 メリットもある。この魔剣を持つ事でスキル あやつり人形をLv. Maxに出来る、そしてそれはとても大きい。敵を倒す時にとても役立つと思われるスキルだ。


【では早速人間よ、妾の主人になるのじゃ!】


 気が早いな、この子。もうちょっと考えていたかったがスキルの為だ、主人になった方がいいのか?


『わかりました、ですが1つだけ確認させてください。あなたは僕にユニークスキル あやつり人形を使っていましたか?』


 魔剣が驚いたようにぴくりと動いた。


【お主はもう妾のスキルを感知しておったのか、その通りじゃ。しかしご主人よ、お主は一体何者ナノじゃ?妾のユニークなスキルを見抜くとは...なんというスキルを使用したのじゃ?可能ならばステータスを拝見させて欲しい。】


 僕は少し悩んだ。竜族にステータスを見せた時のように、この魔剣も勇者に何かしらの恨みを持つものかもしれない。更に、ティルヒィングは呪われている魔剣だ。呪われし魔剣という事は、明らかに女神とは敵対勢力なのだろう。


 でもその時、僕は直感した。ここで正直に僕のステータスを明かさなければこの魔剣の信用を得ることは出来ないのだ、と。そしてティルヒィングはとても強力なスキルを付与してくれる、最早答えは出ている、確定だ。


『良いですよ、ではステータスオープン!』


 七色の光が洞窟の壁を反射し文字を空中に描いていく...


 --------------

 四葉 柊 男性

 16歳

 職業=勇者(闇)

 Lv.1

 

 体力: -500/1500 (+2500)

 魔力: 2356/2356

 素早さ: 5472 (+2500)

 攻撃: 895 (+2500)

 防御: 128


 スキル&魔法 全9種


 幸運 Lv. Max

 隠密 Lv. Max

 鷹の目 Lv. Max

 魔法強化 Lv. Max

 気配察知 Lv. Max

 Reincarnation Lv. 1

 風刃•闇 Lv. 1

 あやつり人形 Lv.1

 転移神の恩恵

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 しばらくの間、そこには静かな空間が広がっていた。まるで洞穴の中には僕とティルヒィング、二人しか居ないかのように...


 最初に静寂を破ったのは当然、僕だった。それに僕はティルヒィングに本心を聞きたかったし、もし彼女が僕に協力をしないつもりならそれはそれでもいいと思ったからだ。


『ティルヒィング、どうかしたのか... 僕のステータスに何か問題でもありましたか?』


 その時突如、魔剣 ティルヒィングを七色の光が包み始めた。


 僕の背中から冷汗が噴き出す、どうやら僕は相当な恐怖を覚えた。彼女は、なにかの魔法を使う気だ。本当に勇者にでも恨みがあったのか、それとも女神に?まずい、ぼくのステータスじゃあもう一回生命力を奪われると本当に死ぬ。くそ、考えろ考えるんだ。


 その時、魔剣が七色の光に完璧に包まれた。あまりの眩しさに僕は思わず目を背けてしまった。


『なッ、嘘だろ...』


 光が収まり僕が魔剣 ティルヒィングのあった場所に目を向けると、そこには全裸の可愛い女の子がいた。


【ご主人様、いえ初代勇者様と同じ勇者(闇)のご主人様!妾はこれからこの擬人化した姿で貴方様をお世話していくつもりなのです。よろしくなのじゃ!】


え?この子ってあの魔剣なのか...?


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