5.1話 ユニークスキル <あやつり人形>

 

 竜が去った後、僕は他の人々が住む町へ行ってみることにした。だって僕は転移した時からずっとず〜っと殺伐とした雰囲気の漂う場所にいたのだ。遥か上空から物凄い速さで落ちていったり、魔族とドラゴンの戦闘を見たり、魔族に生贄として竜族四天王へ捧げられたり...と。まぁつまり、色々あってステータスがチートの僕も疲れてしまったのだ。町に行けばお風呂に入れたり、宿でフカフカのベットに寝れたりするのかも... てかこんだけ色々あったのによく死んでないな、僕。


 そう思った僕はギオラに最後に言われた事を信じて北西に歩いて行った... ら良かったのだけど、僕は何かが洞穴の奥にきらめいているのを見つけた。とても気になる、まるで僕にそれを取れと言っているように。おかしいな、僕はあまり普段からああいう怪しい物には興味が無いのに?


『なんだ、あれ?』


 喉で唾を飲み込んだ、ゴクリ。その時、僕は直感したのだ。絶対にヤバいやつだ、アレ。だって欲しくもないキラキラしている何かを僕の頭の中で取れって誰かが 命令してきてるんだよ?絶対に取るべきじゃない。そう僕は思っているはずなのに僕の体はまるで誰かに操られているようにその何かに近付いていった。


 僕の足が勝手に動いていく、僕はその何かがしっかりと見える距離まで近付いていった。こりゃ、完全に僕の意識は完全にあやつられてるわ。そして、僕の意識がだんだんと遠のいていく...


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 僕はまたあの部屋にいた。真っ暗な部屋にひとつのスクリーンが浮かび上がっている。僕はまた意識を失ったのか?またあの地獄絵図のような訓練の映像のようだ。僕にとてもよく似ている彼は自分を鍛え上げ、模擬戦で仲間たちと殺し合い、そして稀に本当の任務へと向かい人を殺す。無表情で淡々に、彼は多分殺しを悪い事とも考えた事さえないだろうと思わせる映像だ。


 でも時折彼は苦しそうな表情を浮かび上がらせていた、何かに助けを求めるように。しかもそのような表情を浮かび上がらせる回数は日に日に多くなっていった。そう、彼は変わったのだ。以前の彼なら表情が変わるなど有り得ないのだが、全ては彼女に初めて出会った時に...


 彼女はある時からいつも彼と一緒にいた。例えそれが訓練中であっても、どんな時でも一緒にいた。彼女はいつも輝きながら生きていっていた。彼とは正反対な彼女のそんな生き方がきっかけだったのだろう、次第に彼は変わっていった。色々な感情や表情を持ち生きるようになった。時には怒り、喜び、悲しみを感じた。彼の虚ろだった瞳が今や世界に初めて色があった事を知ったかのように輝きを放っていたのだ。


 でもそれはあの日、あの時に全部壊れてしまったのだ...そうそれはあの女の子が訓練場に来た日、白いワンピース、麦わら帽子、そして血が似合うあの子。とても可愛い子。僕に妹がいると女神に言われたとき頭の中に突如湧いてでたあの子、だ。僕によく似た彼の初めて出来た守りたい人、大切な生きがいを殺した...あの子...

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『!!っ...』


 僕は目を擦る。危ない危ない、今意識を一瞬この術に持っていかれていたようだ。あれ?僕は一体何をみていたのだったか?映像を見ていたのは確かなのだが...


 そんなことを考えている間にも僕の足は進んでいく。不味い、あと数十メートル程しか離れていない。なにか考えなければ、どうにかしてこの術から逃れないと。でも...どうやって?そして僕はひとつのアイディアに辿り着いた。てかあの日ってなんだろ、急に悲しくなったのだが?


『ステータスオープン!』


 僕はこう考えた。もしかしたら、竜族の固有魔法「Reincarnation」の時のように僕は転移神の恩恵とスキル 幸運で今受けている精神干渉魔法(スキル?)を取得しているのではないか?と。詰まりスキルの名前は分かるだろうという事だ。まあ、何に役立つのかは聞かないでくれ。


 僕は空中に現れた僕のステータスに目を通していく。でもやっぱりこの術の光景はいつ見ても綺麗だな、本当に。


『…やはりそうだったか、ユニークスキル <あやつり人形> か』


 スキル欄には新しく“あやつり人形 Lv. 1“ というスキルが足されている。ん、ユニークスキル?なんだそれ。クエスチョンマークが僕の頭の中を駆け巡り始めた。



 5.1話END

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