4話 異常なステータス

 前回僕は目を冷ますと竜族の洞窟にいた。


 «人間よ、目が覚めたのなら名を名乗るが良い。»


 洞窟の中に声が響いていく。やはり竜族の威圧は物凄い。


『僕の名前は四葉柊です。』


 «一つ聞いておきたいことがある。貴様ら人間にはあの高さまで飛ぶすべが無い。どうやって登ったのだ?»


 僕は思わず後ずさりしていた。その堂々たる姿、怖い。


 «いや質問を変えよう。貴殿は本当に人間なのか?»


 僕は正直に答えるか、否かを悩んだ。というかまず僕は人間と呼べるのか?そして僕は本当のことを正直に話す事にした。


『僕は人間です。つい先程、この世界へと女神を名乗るアズリエルという女性に勇者として転移されたばかりです。』


 ギロッ


 その時、僕は思わず後ずさりした。ギオラが僕を見る目付きが急に変わったからだ。執拗にじっくりと、それでいて警戒しながらこちらを見てくる。


『あの... どうかしたのですか?』


 «貴様、竜族の前で勇者を名乗る意味を知っていてか?貴様が勇者であるという話、それは本当であろうな?»


 ギオラは今や僕を睨み付けてきていた、物凄い威圧と共に。

 僕は精一杯答えた。

『嘘をついた覚えはありません。全て真実です。』


 «あくまでも自分が勇者だと言うならば ステータスを見せよ。何?やり方がわからないだと?それもそうか、転移したばかりなら知らぬのもしょうがあるまい。ただ、「ステータスオープン」と叫ぶだけだぞ、人間よ。»


 僕は少しの間考えた。言っても大丈夫だろう、少なくとも竜は僕に敵意は持っていない... と思う。そう思って大丈夫なのだろうか?

 そこで僕は万が一の為にも竜族に先に何を意味するのか分からないがそのステータスとやらを見せるより先に見せてもらう事にした。


『では竜族のギオラよ、貴方からステータスを見せてくれないだろうか?こちらも貴方が敵意を持っているのか持っていないのか分からないのだ。』


 竜族は笑いながら言った。

 «よかろう。それで我のことを信用してくれるのであればな!それでは、ステータスオープン!»


 ギオラの周りを虹色の光が囲んでゆく。ギオラが見えなくなったその時、突如空中に文字が現れ始めた。

 --------------

 ギオラ=リベルー 男性

 3521歳

 職業=竜族四天王

 Lv. 176


 体力: 14679/36889

 魔力: 123548/123568

 素早さ: 658

 攻撃: 4568 (+999)

 防御: 9827 (+999)


 スキル&魔法 全9種


 Reincarnation Lv. Max

 ドラゴンブレス•炎 Lv. Max

 威圧 Lv. Max

 流星 Lv. 2

 身体強化 Lv. 4

 Explosion Lv. 1

 魔法耐性 Lv. 3

 物理耐性 Lv. Max

 龍聖の加護

(攻撃、防御のステータスが超上昇する)

 --------------

 僕が思わず触れようとしてしまう程、光っている文字はとても綺麗だった。僕の手は何度も何度も空を掴んだ。


 «これでステータスオープンには危険がないと分かったであろう。貴様が本当に勇者ならば何かしらの非常識がステータスにあるはずなのだ。»


 僕はゴクリと唾を飲み込んだ。異世界で行う最初の魔法...


『ステータスオープン!』


 眩い光が僕を囲んでいく。次の瞬間、虹色の光が文字へと変わっていった。そこには...

 --------------

 四葉 柊 男性

 16歳

 職業=勇者(闇)

 Lv.1


 体力: 1500/1500 (+2500)

 魔力: 2336/2356

 素早さ: 5472 (+2500)

 攻撃: 895 (+2500)

 防御: 128


 スキル&魔法 全8種


 幸運 Lv. Max

 隠密 Lv. Max

 鷹の目 Lv. Max

 魔法強化 Lv. Max

 気配察知 Lv. Max

 Reincarnation Lv. 1

 風刃•闇 Lv. 1

 転移神の恩恵

(転移する前の職業に応じてステータスが驚異的に上昇する& 高確率で相手が使用したスキルや魔法を覚える事が可能)

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 と書いてあった。


 «なっ、このステータスでレベル1だと。勇者の平均を遥かに、いや歴代最強と呼ばれた初代勇者にも匹敵するステータスだ。勇者(闇)という職業も聞いた事がない。そして... 竜族の中でも選ばれし四天王以外には使用できない筈の「Reincarnation」を何故勇者といえども人間が覚える事が出来たのだ?この転移神の恩恵によるものか?もしそうならば強力すぎる、世界のバランスを崩しかねない。しかしながら最もおかしいのはやはりスキルが既に5つレベルMAXという所だ。»


『これで、僕は勇者だった訳ですからここから出ていっても良いですか?お願いします、竜様』僕はそうダメ元で聞いてみた。


 «何を言っておるのだ?貴様の持っているスキルや魔法を見よ。貴様の方が我よりも強くなれる。ステータスなら我に今は分があるが、お主が全力でかかってくるならば我に勝ち目はない。»


 僕の中で衝撃が走る。魔族をいとも容易く追い払った竜族より僕の方が強い?そんな馬鹿な...


 «貴様が人間のもとへと行くのであれば、ひとつ言っておこう。お主が授かったその恩恵の事は誰にも言うでないぞ、さもなくば殺されてもおかしくは無い。そういえば人間の町に行くというならば北西に5,6時間ほど歩くが良い、ではさらばだ。»


 そういうとギオラはその大きな翼を広々と広げ飛び去っていった。その姿はまるで神のようだ。


 ここでやっと僕の異世界ライフが始まったのだ。それより僕の転移する前の職業はどうやら暗殺者で間違いないだろう、だから僕のステータスの素早さ、体力、そして攻撃力がアップしているのだ。そう思った時、僕はゴクリと唾を飲み込んだ。


 つまり僕は、本当に人間を殺して生きていっていたのか...?そしてあの女の子も本当に僕の妹なのか?




 4話END

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