1話 記憶喪失した勇者
起きて...
起きて...
起きないと地獄送りにしちゃうわよー....
(ここは...?)
目を覚ますと僕の周りは真っ白な世界だった。どんなによく目を凝らしても他のものを見つけることが出来ない。叫ぼうとしても声が出てこない。
(ここはどこなのだろう?ここに来る前の記憶が全くない。僕は一体どこの誰?)
その時、僕は背後からの突然の殺気を感じ、身を仰け反った。頭上数cmの所を光の光線が通り越していく。
あわてて背後を向くとそこには、光り輝く大きな翼を持ったギャル美女がいた。頭の上には7色に光り輝く輪が浮いている。
「私の名前は転生を司るME☆GA☆MI☆アズリエルだよ~ん!ちなみに、今の光線は貴方が中々起きないしこっちを見ないから狙ったッス。」
は?こいつってもしかして馬鹿なの?人が起きなかったから殺すって...
ていうかここどこ。
「貴方は平和な地球に住む人類のくせになんかステータスが高いので〜、前々から勇者として異世界へ転移させようと思ってたんですけどぉ」
「そしたらついさっき死んだのでチャンスと思って~↑ ノリで神界に呼び出してみました~(笑)。」
いちいち言っていることが分からない。それにまずなんだ?そのステータスというやつは。女神様はどうやら僕をステータスというもので値踏みしているらしいが
そして僕には自分の記憶がないことを女神アズリエルが知らない事に気づいた。
この自称でも女神らしい奴なら、もしかしたら記憶をもどせるかもしれない、そう思った僕は彼女にそれとなく聞いてみる事にした。もちろん、こんなノリで人を呼び出す自称女神様には期待なんてしていなかったが。
(ちょっと待って下さい、えーっと、女神?アズリエル... 様?僕記憶がないんですけど、戻せたり出来ますかね?)
「早速転移しちゃ... え、今なんと?記憶喪失?なにかの冗談ですよね?」
(えーっと、結構真面目に言ってるんですけど。で、記憶戻せますかね?)
ギャル女神がこっちをじっとみてくる。そしてめんどくさいように深いため息を着いた。あ、これは無理なやつですね。
「じゃああなたのことについて簡単に教えてやるッスよ。 それで思い出せなかったら諦めて下さいねー↑? 貴方の名前は四葉 柊。16才の暗殺者で人を殺した回数は100回越え。好きな食べ物はとんこつラーメン、嫌いなものはかまぼこです。妹が1人いますね。かわゆいですよ~、神界から見た事あります。まあ、妹さんの殺し方も私は好きですよ。一撃で腸を抉り出すその手際、いつ見てもSU☆BA☆RA☆SI☆I です。」
僕はいくら自分について教えて貰ってもそれが自分だとはピンと来なかった。へ〜、僕には妹がいるのか。
(うん?ちょっと待って下さい。つまり僕は人殺しを生業とする暗殺者で、妹も同業者って事ですか?)
その時、僕の頭の中にハッキリとはしない女の子の輪郭が浮かび上がった。白いワンピースを着て麦わら帽子をかぶった可愛いらしい女の子だ。しかし、そのイメージも数秒経つと、見えなくなっていた。
...ッ‼︎ 今のはなんだ?
「そうッスよ。なにか思い出しましたか?」
(いえ、本当にすいません。何も思い出せません。)
「まあ、しょうがないのでそのまま転生してください... もちろん転生については分かりますよね?地球人で日本人なんですから。」
僕は一瞬固まった。そうか、僕ってチキュウジンの中のニホンジン?っていう人種なんだ。
「その表情だと何もわかってなさそうですね。そりゃあそうかー、記憶失ってるんでしたね?仕方ないので向こうの世界の常識を今ここで簡単に教えて上げるっス。まず向こうの世界には魔法ってのがあるデス。魔法はスキルポイントを割り振ることで覚えることができるっすヨ。スキルってのも同じっす。更にスキルにもレベルがあるっす、これにもスキルポイントは必要ですのでまぁ頑張ってください。魔法は自分のMP消費して使うんす。」
「魔法には基本属性が6つあるっス。 炎、水、風、土、聖、闇
その他にも、治癒魔法、召喚魔法などの便利な無属性魔法だって存在するっス。でもその便利で強力な無属性魔法は使える者が少ないっす」
「魔法の他にも技や必殺技もスキルポイントを使って覚えて、MPを使って使用するよ。スキルポイントはレベルアップ時に少しずつ手に入ります。」
「ここまでで質問あるですか?」
つまり自分が戦えば戦うほど強くなるのか。なんか楽しそうだな、と僕は思った。
(特にありません、ありがとうございます。)
「じゃあこれからは君次第の異世界ライフ、楽しんでね。でも君の目的は一つ決まっているよ?! あ、そうだ。忘れていたけど君には勇者として人間を三種族戦争に勝たせるっていう使命があるから。それでは君の活躍を期待してるよ!ではでは、行ってらっしゃい~↑」
そして、僕はこの自称ギャル女神に転移された。これが僕の異世界ライフの始まりだった。
だけど僕は今でも後悔しているんだ。なぜあの時僕は彼女に他にも転生者、転移者がいるのか聞かなかったことを.....
1話前半END
……………
「あ、そう言えば彼に一つ伝え忘れました。あの世界へは上空遥か6000キロに転移してしまうのでした、(๑>•̀๑)テヘペロ。
まぁ彼なら大丈夫でしょー。なんたって彼、地球上では転生/転移用最強クラスの勇者候補カタログに載っている5人の人間の中で最強ですからね。受け身を取るぐらいで簡単に着地出来るハズ...」
しかしその時、女神はある事実に気付いてしまい、脳内に革命(?)が起きた。
「あれ?ちょっと待ってください~、柊は殺されたんですよね?確か柊は彼の親友に殺されたんでしたっけ?勇者候補中でも最強の柊を殺したのが人間?その人間、興味深いですね~(笑)」
「じゃあその子も転生させちゃいますかね、面白そうだし↑」
そう思いついた女神は地球人転生/転移カタログを一心不乱でめくっていった。
「あー、やっと見つけましたよ。その子の名前は、海藤 明ですか... なっ、最強クラスだと?」
女神は海藤明と書いてある下に、魔王候補と蛍光ペンでラインが引いてある事を見つけた。しかも、貼ってあるメモの中には、
[魔王の中でも最強クラス]
と書いてある。
それを見た女神の顔がピンク色に染まっていった。
「あら?これはこれは~ 現世で殺し合った人間同士が、異世界で続きをってシナリオですね~。これこそ神の啓示! 萌えますね、本当に萌えちゃいます♡ 前世の記憶を持った復讐に燃える魔王 海藤明と前世の記憶を失った勇者 四葉柊がまた出会い、殺し合う。ん~ッ、素晴らしい!」
そう言うと、自称女神は笑いながら下を見た。そこには美しく、壮大な世界が広がっている。ドラゴンが飛び交い、魔物が人々を襲っている。ある人は剣を取り、懸命に立ち向かい、ある人は神に祈いを捧げている。
「そう、彼らの殺し合いの記念すべき舞台はこの魔物と人間、そして龍が互いに領土を命懸けで取り合う素晴らしき剣と魔法の世界、ニブルヘイム。またの名を「神の娯楽」ニブルヘイム。 いやぁ、これは面白くなりそうですよ〜」
アッハハハハッハ... アハハハ...
真っ白なその何も無い空間にアズリエルの声だけが響いている。
そう、女神は笑っている。彼らの殺し合いに巻き込まれる異世界に元々住んでいた生き物の事など少しも気にとめずに... ただただ自分の娯楽のために。
1話後半END
….................
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