親友殺しの青年元暗殺者による異世界ライフ ~記憶を失っても、身体能力はそのまま!~
@SotaBHS
0話 親友殺しの暗殺者
トク... トク... トクン...
僕の周りはいつも暗闇に包まれていた。幼い頃から裏の社会で暗殺者として育てられてきた僕には心を許せる相手はいなかった。
トクン... トク... トクン...
でも13歳の冬、僕には親友が出来た。人生が色付くとはああいう事なのだろう。しかし、彼は僕が暗殺した初めてのターゲットの一人息子だ。そして彼は僕が彼の父親を殺した事実は知らない。
その彼の体は今僕の目の前にあり、動いていない。
トク... トク... トクン...
そう。彼は死んでいる。 胸元には大きな切り傷がある。
首と胴体?もちろん繋がっていないに決まっているじゃないか。だってそれこそが僕が最も得意としている殺し方なのだから。
トクン... トクン... トク...
僕は自分の手をまじまじと見つめた。血まみれの短剣を持った僕の手は震えている。
ほらみろ、僕にはちゃんと心があるじゃないか。今、現に僕の手は「喜び」を感じ震えている。親友を殺して喜んでいるじゃないか。やはり師匠は嘘を付いていたのだ、僕はまともな心を持った人間だ。心を持たないモノじゃない。
ドクン... ドクン...
その時、僕は普段より呼吸が難しい事に気づいた。その原因は分かっている。
そして、僕は自分の左胸部を見た。親友が親の形見として持っていた小さなナイフが刺さっているのが見える。彼は僕の記念すべき100人目のターゲットだった。
僕は今更ながらゆっくりと、自分が死んでいっているとこに気づいた。
殺した僕の親友、ターゲットが最後の力を振り絞って投げたそのナイフで
トク... トク...
まだ動いている心臓の鼓動が聞こえる。とても静かで弱々しい。僕が16年もの間使ってきた心臓だ。
トクン... トク....
そして、僕の心臓はわずか16年で止まった。
死にゆく間、僕は偶然足元に転がっていた血と涙で醜い親友の顔をじっと見つめていた。いや僕は多分自分が殺した獲物の最後を目に焼き付けたかったのだろう。決して、親友をこの手で殺したことに罪悪感を覚えたからではない。ただただ獲物の最後を見たかったのだ。
でも僕はその光景から目を離せなくなった。とても後悔した。何故その時彼の顔を見てしまったのか、僕自らが叩き落とした敗者の、親友の哀れなその首を見た事を。
ぽとり...
手のひらに生ぬるい液体が落ちる。血?いや違うこれは...
涙だった。親友の哀れな首を見て自分が殺したにもかかわらず、僕は泣いていたのだ。僕はもう随分長い間泣いていなかった。僕の目の前はどんどん暗くなっていく。
「殺しちゃってごめんね、本当にごめんね」
僕は最後の力を振り絞ってその顔に触れようとした。しかし、僕の手はどんなに力を込めてもピクリとも動かなかった。
「今までありがとう...」
それが僕のこの世界での人生最初の涙と、人生最後の言葉だった。
そして僕は死んだ。
…………………………
ニュース速報です。ただ今速報が入りました。世界的にS級指名手配されていた殺害を生業とする16歳凶悪犯罪者、四葉 柊氏が死去したことが確認されました。警察によりますと、ただ今現場はFBIによって指揮が取られているらしいのです。もう一度繰り返します。世界的にS級指名手配された四...
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