第三章 メサイア

 「K」は持ちかえった金属物を装置にはめる。装置にあるディスプレイには古代文字らしきものが表示された。

 それはハムラビ法典に書いてあった文字だと思い出した。なんだか嫌な予感がしたが起動させ続ける。

 「K」はその装置には共感力を高める力があることを知った。その装置を通して人々を力づけるような演出、ドラマを作り上げることを理解した。

 「K」のSNSは、徐々にフォロワー数が増加していった。

「K」の遺伝子は最高グレードにランクインした。遺伝子の売却益で「K」の収入は急増していった。

 「K」の SNSはどんどん評判になり、やがて時代のカリスマになり、ついには神格化されていくようになった。

 「K」が批判する者は粛清され、世界から追放される。「K」が肯定する物は、価格が高騰していく。

 「K」は世界を救うために数多くの政策を批判し、既存の政権を批判する。すると人々は「K」を「メサイア」と呼ぶようになった。

 政策は「K」の命じるままに変更され、「K」の批判する政権は批判がある度に倒れ、変更されていく。

そして、「K」が実質的に権力を握っていることに人々は気付いた。「K」が批判する者は社会から追放されるからだ。

 

そして、人々は理解した。

彼がもはや独裁者であることを。

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