第二章 バンドオンザラン
バンドオンザランはカジノバーで繁華街の裏通りにあり、いつもクリケットが放映されていた。
人々はクリケットを見ながらカジノをしているのだ。
そこにいるのは単なるギャンブル中毒の中年男性が主だ。
「L」はそこでブラックジャックをしながら、暇つぶししている若い男だった。
風貌はひどく痩せぎすで、いつも薄汚れたTシャツを着ているのが特徴だ。
変なロゴのTシャツばかり着ている。
彼が着ているTシャツは、「私はヘンタイです。」とか、「ウサギとセックスしたい」とか、「走ったら負け」など、奇妙なロゴばかり。
「K」は「L」にカジノの掛け金として使われるメダルをいくらか渡した。
そして、「これ、例のフォロワー増加装置の共鳴媒体なんだけど、グレードを上げられないかな?」といった。
「L」は「それ明らかに非合法だよね。これじゃチップ足らなくね?」と言う。
「K」はこの前の改造依頼が全くのジャンクで、クズであったことを言いつらって、抵抗したが、結局二倍払わされた。それは給料二か月分だった。
「L」は、ちょっと待ってと言って、カバンをあさり始める。
彼は手のひらサイズの長四角い金属物を手渡して、「これをつなげてみてよ。」と言い、「やべえから帰る。」と言い捨てて去っていく。
「K」は後ろから「大丈夫なんだよな、絶対大丈夫なんだよな。」と追いかけたい気持ちを抑えて声を上げる。「これに大金つぎ込んでるんだぜ。」とまくし立てる。
「L」は振り向きざま、「やっぱりあんたバカだよな。とっととしまって帰れよ。」とまた言い捨てて帰る。
かなり異様なやりとりだったが、しかし、誰も気にする人はいなかった。
人々はクリケットに夢中なのだ。
「K」はクリケットへの歓声を背にして、うつむき加減に店を出た。
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