Stipulation(仮)

安濃津 伊勢

 「無駄に長き時というのも、苦痛ではあるな。これはわれらの楽しみなのか、拷問なのかと問いたくもなる。」

漆黒の闇の中、中年と思わしい声が聞こえる。

「問うたところで、無駄な事よ。答えるものもなく、与えられるべき理由も存在しないのだからな。」

闇の中、また別の声が聞こえる。

「我等は、我らの為すべき事を為す。そういう決まりではなかったのですか。誰が真に真たるものなのか…その答えを出すために。」

また別の声が上がる。

今度は若い女性の声のようだ。やわらかい中にしかし感情のこもらぬ冷たささえ感じる声だ。

「したり…その通りだ。我がここで、愚にもつかぬ問いを重ねても詮無き事。なれば…この退屈を紛らわせるために、一手撃たせて貰うとするか‥。」

中年の男の声、そのあと高らかな笑い声が病みの中に響く。


その声に何も返すことなく、二つの気配が消えた。


「愛想のない者どもよな。まぁ良い、我はわれの目的と愉悦のための策を行うとしようか…。」

中年の男はそういうと、再び高らかな笑い声をあげた。

そして病みは静寂に包まれた。


「退屈だ…。」

レイライムは周りに聞こえぬように小さな声でつぶやくと、自慢の金色の巻き毛を右手の人差し指で、軽くはじく。

「まだ言ってるの?仕方ないでしょうこれも仕事のうちなんだから、いい加減観念なさいな。」

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