第5話

 知らせを受けたのは私でした。


 すぐに、家族で病院へ向かいました。


 けれどそこには、すでに冷たく青白くなった妹が眠っているのでした。頬に擦り傷があるだけの、綺麗な死に顔でした。


 もちろん、母はすぐさま『よみがえりの議』を天に唱えました。しかし、どういうわけか、その議は受け入れられませんでした。


 私は受け入れられたのに、妹は受け入れられなかった。わからない。私よりずっと努力家で善良な妹が、生きられない。


 彼女が事故にあったのは、遅くまで働いて、疲れ切って家路に着いたそのときでした。


 その頃、私は居間でぬくぬくとコタツに入っておりました。ああ、みかんが食べたいな、などと呑気に思いながら。


 なぜ、生きる資格を与えられたのが、この怠け者の姉の方なのでしょうか。


 これは何かの間違い。そうに違いありません。


 家族が悲観に暮れるさなか、来訪者がありました。

 いつぞやの、天界の事務員の方ではありませんか。


 私への挨拶を簡単に済ませ、彼女は言いました。


「『よみがえりの議』により生還した者には、死者への面会が許されます。お会いになりますか」


 その言葉を聞いた瞬間、母が事務員の方に詰め寄りました。


「私が! この子の代わりに、私に行かせてください。それくらいの融通、効かせてくれたっていいでしょう? 私に、会わせてください。娘なんです。私の。ああ、どうして。私の命をとってください。あの子の代わりに、どうか」


 脈絡のない言葉でわめき、すがりつく母に、事務員はいかにも事務員らしく平たんに言ってのけました。


「それはできません。使者への面会が許されるのは、『よみがえりの議』により生還した者のみに限られます。それから、あなたが亡くなった彼女の代わりになることもできません。天の意思に反しますから」


 天の意思。


 その天の意思とやらが、妹を返さないと言うのか。なぜ、妹が………確かめねばなりません。私しか会えぬと言うのなら、私が責任を持って確かめに行かねばなりません。


 私は泣き叫ぶ母をなんとかなだめ、事務員と共に天界へ上がることにしました。

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