409・生還した鬼人族(雪風side)
抜け出した
流石の
「随分と遅い帰りだな」
宿に入った途端に声を掛けられて身体を竦め、恐る恐る視線を向けると……そこには鋭い目つきで睨みつける
「あ、えっと……
「おう。戻ってくるとしたらまずここにくるだろうと思ってな」
ふん、と腕を組んでじろじろと眺める
「自分がしたことをわかっているな?」
「は、はい……」
しょんぼりする雪風にため息を零した
「まさかそこまでエールティアの事を慕ってるとはな」
「あ、あはは……」
乾いた笑いで誤魔化そうとした雪風は、再び鋭い視線で睨まれ、萎縮してしまった。
「それで、どうだった? 戻ってきたって事は成果があったんだろう?」
「実は――」
そこから簡単ではあるが今までの経緯を
まさか一度死んだ上に生き返って善戦するなんて思ってもみなかったのだ。普通は決闘でもない限り死人が蘇るなんて現象はあり得ない。
過去、そういった禁術を使った者がいたという記述した本がある事は
「それで、身体は何ともないのか?」
「それが……普段以上に力が溢れている気がします。何と言いますか、今まで感じていた世界がまるで違って見えます」
一度死んで再び蘇ったからかは雪風自身にしかわからないが、その様子は明らかに以前とは違っていた。
(纏っている気迫が段違いだ。付け焼刃の力を身に着けたかと思ったが、どうやらそうじゃないみたいだな。……ちっ、今じゃなけりゃ決闘でも挑みたかったんだが)
目の前に強者がいるのに戦えないジレンマ。それを二度も味わうとは思っていなかった
「ったく、苛々するな。このもどかしさはよ」
「?」
頭を掻きながら呟いた言葉は雪風には届いておらず、何を言っているのだろう? と首を傾げる事になった。
その様子に
「……はぁ、まあいいか。お前の手に入れた情報がありゃ、エールティアも納得するだろう。わざわざ危険を冒さなくてもいいってわけだ」
「そうなるな」
勿論、それは
だからこそ、雪風の持ってきた情報は都合が良かったのだ。そして――それは雪風にとっても同じだった。
「……そうですね。今はこの情報を一刻も早くエールティア様にお伝えしたいですし、少し休養を取ってから引き返すのも良いでしょう」
雪風が頭を悩ませながら話をすると、
「意外だな。お前の事だからもう一度攻めようとか言ってもおかしくないと思ったんだが」
ヒューと互角に渡り合える程の実力を身に着けた今の彼女と
だが雪風はそれを選ばなかった。その事に
「確かにその方が良いのかもしれません。ですが、あまり無理をするべきではないと思います。僕達の国のことわざに『急いては事を仕損じる』とありますからね」
(それに……ヒューとの決着は譲れません。今度会った時、彼と本気で死合うのは僕じゃないといけないですから)
エールティア第一の雪風がそれを含めても自分の我を押し通したいと思う気持ちは初めてだった。それほどヒューとの戦いが心の中に残っているのだろう。
「そうか。……まあ、とりあえず今日は身体を休ませておけ。昨日一日大変だったろうからな」
「ありがとうございます。ところで、あの二人はどうしたのですか?」
雪風が聞いているのはレアディとアロズの二人の事だった。
「あいつらは情報収集――という
その言葉に雪風は呆れかえったが、それも仕方ないと思い返すことにした。
雪風にとってそれだけ彼らの評価は低かったのだ。
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