第3話 夕飯
<なんども辻褄が合うように変更しております。 話が少し変わってるかもしれません。 申し訳ない。>
どう答えれば良いんだろう。
俺は慌てて夏音から目をそらした。
すると目の前にはいつもの光景が広がっていた。
そう。 話している間に、家の前まで来ていたのだ。
「つ、着いたから、じゃあな」
「もう。 話逸らされたっ・・・」
俺は逃げるように玄関の鍵を開ける。
「また、あとでね」
夏音は俺にそう告げた。
「ん? あっ、そうか今日は金曜日か」
やべぇ、完全に忘れてた...
「え〜。 忘れてたの?」
夏音はまたもや頬を膨らませて睨んでいる。
だからそれ、ほんとに破壊力がすごいんだって。
なんか、睨まれてるのに悪い気がしないんだよな。
あ、誤解の無いように言っておくが決してMとかではない。
「もう、しっかりしてよね。 じゃあ、また」
そう言って夏音は家に帰っていった。
そう、夏音は今から俺の家に来る。
というのも、夏音の両親は共働きで、毎週金曜日は夜遅く帰ってくるため夕飯が用意できないんだとか。
そこで、一人で食べるのは寂しいだろう、と俺の母親が金曜日は俺の家で夕食を食べることを提案したのだ。
それ以来、夏音は毎週金曜日、学校が終わると俺の家に来る。
夕飯ができるまでの間は俺の部屋にいることもあるのだ。
急いで片付けないと。
俺は靴を脱ぎ、二階へかけていった。
◇
「よし。こんなもんか」
部屋の掃除が一段落ついたところで俺は疲れてベッドに飛び込んだ。
もともと部屋はきれいにしている方なのであまり時間はかからなかった。
それにしても今日の夏音はいつにも増して可愛かったな。
忘れないうちに小説に書いておこう。
そう思ってパソコンの電源をつけて小説投稿サイトを開く。
そして、ヒロインが教室に迎えに来て、準備が遅い主人公にヒロインが頬をふくらませて怒るシーンを書いて保存した。
ちょうどそのタイミングで家のインターフォンがなったので、俺は階段を降りて玄関の扉を開けた。
そこにいるのはもちろんさっきまで一緒にいた夏音なのだが、制服からワンピースに着替えた、彼女はいつもよりも一層可愛く、何かぎゅっと抱きしめたくなるような小動物のような感じがして、なんだか愛おしかった。
それに、いつもより気合が入っていないか?
俺は夏音のあまりの可愛さにしばらく言葉を失っていたが
「夏音ちゃん、いらっしゃい」
という母さんの声で意識を取り戻した。
「はい。 お邪魔してます。 これ、よかったらどうぞ」
そう言って夏音は母さんに小袋を渡した。
「わぁ、美味しそうなお菓子。 夕飯の後にコーヒーと一緒に出すわね。 それと、もう夕飯できあがるわよ」
そう言ってそそくさとキッチンへ向かう。
「分かりました」
夏音も靴を脱ぎ、母さんの後についていった。
あっ、私服を褒めることができなかった。
こういうところだよな、俺は。
また俺は自分に失望するのだった。
◇
「「いただきます」」
今日の夕飯は肉じゃがだ。肉じゃがなのだが、
(人参入ってる・・・)
そう、俺は人参が大の苦手なのだ。
何度もいらないと言っているのに母さんは人参を入れてくる。
バレないように人参だけ避けて食べていると、
「まーくん、もしかして人参嫌いなの?」
と隣に座っている夏音が尋ねてきた。
(まあ、隠しても意味ないか・・・)
だから俺は首をコクリと縦に振った。
すると夏音は、
「好き嫌いは良くないよ」
と注意してくる。
「でも苦手なんだよなぁ、この味」
俺は意地でも食べたくないので嫌がった。
すると夏音は、肉じゃがに残る大量の人参のうちの一つをを箸で掴んだ。
夏音のやつもしかして食べてくれるのか?
やっぱり優しいなぁ。
夏音のことが更に好きになりそうだった。
なりそうだった、のだが・・・
それはただの期待だった。
「食べないとだめだよ」
と、掴んだ人参を俺の口に差し出してきた。
結局食わされるのか。
だが、今はそんなことよりも・・・
(ちっ、近い。 それにこれって、アーンだよなっ・・・。 今日の夏音、なんだかいつもより積極的じゃないかっ?)
当の夏音は、自分がやっていることの意味に気づいていないのか、ぐいぐい近づけてくる。
今、俺と夏音の距離はほとんどない。
(めっちゃいい匂いするっ)
夏音からはふんわりとしたフローラル系のいい匂いがする。
それに、
夏音のきれいな顔とサラサラの髪が目と鼻の先にある。
しかも夏音は箸を持っていない方の手でその髪を耳にかけ、こちらを下から見つめてくる。
(かっ、可愛すぎだろ)
顔から火を吹きそうだ。
しかし意識しているのが夏音にバレたら余計に恥ずかしいし。
それにもう耐えられそうになかったのでパクッと食べた。
「美味しい?」
夏音はにっこり笑って聞いてくる。
緊張しすぎて味がよくわからない。
「あ、ああ」
これが失敗だった。
また新しい人参が俺の口に投下されそうになっている。
気づけば手が汗でぐしょぐしょだ。
暑い。
もう無理だ。
その二人だけの空間に割って入ったのは、母さんだった。
「あら、熱いわねぇ。二人とも」
そう言って母さんが茶化してきた。
そのおかげでサウナに入っているような暑さが俺を襲ってくる。
ようやくそこで自分がしたことの意味に気づいたのか、夏音はいきなり顔を赤くし、あたふたと慌て始めた。
その恥ずかしがった顔で俺の方を見つめてくるので、俺もさらに恥ずかしくなって、また変な汗が出てしまった。
(恥ずかしがった顔の夏音も可愛い・・・)
これも忘れないうちに後で書いておこう。
ついそんなことを考えてしまう俺だった。
一方の夏音は居心地が悪くなったのか、残りのご飯をさっさと食べ、ごちそうさまでしたと言って早々に逃げていった。
母さんは、残された俺にニッコリと意味深な笑みを浮かべてきた。
「で、夏音ちゃんとは付き合ってるの?」
「っ、付き合ってないよ」
母さんにそう聞かれた俺は慌てて否定した。
「なぁ〜んだ、付き合ってないの? 夏音ちゃんだったら娘になってもくれてもいいのに」
すると母さんはそんなことを言ってからかってきた。
「もうっ、やめてくれ」
更に体が熱くなった。
母さんにこれ以上遊ばれるのは耐えられないので、嫌いな人参を一気に口に放り込んでお茶で流した。
「ごちそうさまっ」
そう言って俺は逃げるように二階へ上がっていった。
<あとがき>
これまで長々と引きずってしまい申し訳ございません。
全然タイトルと違うじゃないか!
そう思われた方。
もう少しお待ちください。
次は夏音sideのお話です。
少し時が戻ります。
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