第2話 二人の帰り道

 周りからの視線が痛い。


「おい、明瀬さんがまたあの男と帰ってるぞ」


「あいつ誰なんだよ。羨ましい」


 夏音は本当に人気だ。


 こうやって一緒に帰るたびにそのことを実感させられる。


 俺は彼女の隣を歩く資格があるのだろうか。


 ついそんなことを考えてしまう。


 でもそんな弱気じゃだめだ。


 近いうちに告白すると決めたのだから。


 一人で密かに決意を固める俺に、夏音が衝撃の事実を口にした。


「私、今日告白されたんだ」


「ふぇ?」


 突然、彼女から告げられた言葉に驚いて変な声が出てしまった。


 そうか。


 今、なんと言った?


 告白された、と言わなかったか?


「すまん、よく聞こえなかった。 もう一度言ってくれ」


「だからね、私、今日告白されたの」


 どうやら聞き間違えではなかったらしい。


 俺は絶望した。


 先を越されてしまった、と。


 次からはそいつと一緒に帰るからもう一緒に帰れない、そう告げられるのだろうか。


 もう、しゃべることさえできなくなるのだろうか。


 そう思うと涙がこぼれそうだ。


 なぜ、もっと早く気持ちを伝えなかったのだろう。


 こうなることは分かっていたのに。


「でも、断ったんだ」


「え?」


 しかし、俺の不安は、続く夏音の言葉によって消えた。


 え、断ったのか?


 どうやら早とちりをしてしまったらしい。


「・・良かった」


「え、なんて?」


「なっ、なんでもない」


 つい本音がこぼれてしまったが、夏音には聞こえてなかったみたいだ。


 ・・・聞こえてても良かったのに。


「まーくんはさ、私が他の人と付き合ったら嫌?」


 夏音が上目遣いでそんなことを聞いてきた。


「お、俺は・・・」


 やばい。


 どう答えれば良いんだっ・・・




 <あとがき>

 今回は長くなりそうなのでここで切って次の話に続けます。

 ぜひ次の話も読んでいただけると嬉しいです。

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