第4話 夏音の気持ち

 <夏音ちゃんの視点です。 少し時間が前後します。>




 今日は待ちに待った金曜日。


 まーくんのお家で一緒に夕食を食べる日だ。


 それなのに、さっきのまーくんったら今日が金曜日であることを忘れていた。


 もう。


 私は毎週、毎週、こんなに楽しみにしてるのに。


 夏音は部屋で制服を脱ぎながらそう思う。


 まーくんは昔から鈍感だ。


 多分、私がまーくんのことが好きだって気づいていない。


 こんなに私は、まーくんのことが大好きなのに。


 ◇


 中学校のとき、友達から


「付き合ってるの?」


 と疑われたことがあった。


 そう見えるのかな?


 私はそう疑われるのが少し嬉しかった。


 なのに、その時のまーくんは慌ててそれを否定してしまった。


 まーくんは私と付き合っていると思われるのが嫌なの・・・?


 やっぱり、まーくんは私のことを友達としてしか見てくれていない。


 そう思って何度も諦めかけた。


 でも、まーくんと過ごしている時間が私にとっては何よりも楽しく、かけがえのないものだった。


 まーくんのことが世界で一番、大好きだった。


 こんなに好きになった人をそう簡単には諦めきれない。


 絶対に振り向いてもらうんだ。


 そう決意した私は、まーくんに女の子として見てもらうための、努力をはじめた。


 髪の毛の手入れも入念に行い、サラサラの髪の毛を目指した。


 お洋服だって雑誌を見て、何度も流行のファッションを勉強した。


 男の子の振り向かせ方だって、ネットの記事でたくさん読んだ。


 そんな中、昨日の夜、ネットで見つけた


 ー鈍感な彼に恋心を気づかせる方法ー


 というサイトの中で


「あなたが告白されたことを伝えれば、相手の方は焦りを感じます。 あなたの大切さを再認識するでしょう」


 という記事を見つけた。


 だから私はそれを実行してみることにした。


 結果は、大成功だった。


 まーくんは、私が告白されたと言ったら慌ててくれていた。


 もしかしたら脈ありなのかもしれない。


 そう思うと、とても嬉しかった。


 だからつい、踏み込んだ話をしてしまった。


 自分でも言った後にびっくりしていた。


 あんなことを言ってしまうなんて私はおかしくなったのかもしれない。


 こうなったのも、みんなまーくんのせいだ。


(さっきは話逸らされちゃったけど、また今度聞くんだから)


 そう心に決め、夏音は今日のために買ったワンピースに着替えた。


 ◇


 まーくんの家の前で、手鏡を見てもう一度確認する。


(うん。 ばっちり)


 夏音は自分の格好を最終確認し、まーくんのお家のインターフォンを押した。


(まーくん、可愛いって言ってくれるかな?)


 夏音は少しそわそわしながら待っていた。


 するとすぐに、玄関の扉が開いた。


 出てきたまーくんはさっきと変わらず制服だった。


(まーくんっていつもどんな格好してるのかな )


 夏音は真人と今度一緒にお出かけがしたいと健気に思うのだった。


(ところで、服の感想は?)


 まーくんはこちらを見たまま固まっている。


 何も言ってくれない。


 もしかして新しいことに気づいてない?


 そんなふうに思考を張り巡らせていると、まーくんのお母さんが出てきた。


「夏音ちゃん、いらっしゃい」


「はい。 お邪魔しています。 これ、よかったらどうぞ」


 私は、この前買ってきたクッキーを渡した。


「わぁ、美味しそうなお菓子。 夕飯の後にコーヒーと一緒に出すわね。 それと、もう夕飯できあがるわよ」


 そう言って、まーくんのお母さんはキッチンに戻っていった。


 私も靴を脱いでまーくんのお母さんに着いていった。


(まーくん、何も言ってくれなかった)


 すれ違うまーくんを少し睨んで、不服であることをアピールした。


 <あとがき>

 次回も夏音ちゃん視点です。

 よろしければ星を恵んでください。

 作者の切実な願いです。


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