骨髄採取入院 手術当日 後半

地獄の絶対安静。こう書くとどんだけつらいんだ(恐怖)と思われそうだ。いやでも実際辛かった。


人間、喉元過ぎれば…。振り返ると何がそんなにしんどかったかわからなくなるんですよね。

なので、その瞬間携帯にメモっておきました。


マジ無理。暑い。暑い。寝返り打ちたい。他の病室のナースコールうるさい、美女と野獣(ナースコールのメロディ)トラウマ。面白半分に引き受けなきゃよかった。横向きたい。時間が過ぎない。暑い。暑い。暑い。


……えー、ほぼ呪詛ですね。


まぁでもラスト30分までは、このあたりも面白おかしく話の種にしたるわ!なんて考える余裕もありました。こうやってメモってるくらいだし。


たがしかし、ラスボス到来。

余裕ゼロ

メモを書くことも忘れる


そいつの名は…尿意。


避けられない生理現象。


たまらず二度目のナースコール。


「我慢するか、ここでする?」


絶望の選択肢ーーー!


そんなね、看護師さんは日常茶飯事でなにも気にしないかもしれないけど、ぐんぬぬぬぬ。健康な人間にはハードル高い。

他人に下の世話をさせる。人間の尊厳に深く関わる…

介護でも問題になるもんね。


「が、我慢します!!」


点滴も入れてるからいきたくなっちゃうよねー。どうしても我慢できなくなったら言ってね。

と軽やかに言い、去る看護師さん。


わたし膀胱の許容量には結構自信あるんですけどね。あはははは。


ここからもう時計とにらめっこ。

まんじりとも進まない時間。


……

………


経った、経ったよね。3時間経ったよね。


病室に戻ってきた時間、私はしかと覚えてますよ。意識もはっきりしてたし。


…誰も来ない。


ナースコール3回目!


「あー、ちょっとまってね!先生呼んで来てオッケーだったら安静解けるから!!」


医師の許可…!!


「先生もう少しかかるから、準備だけしとこう」


血圧測りオッケー、

足からエアー外され、点滴も取っぱらう。


まだか、先生、もう無理や限界や……と絶望していたら走って来てくれた。

神々しく見える。ありがたやありがた……


「傷口見るのでうつ伏せになってください」


オーマイゴーーーーッド!!!


この期に及んで腹部圧迫ムリムリムリムリ(汗)

腕プルプルさせながら肘立て伏せ。


傷口を覆う巨大絆創膏が剥がされ、視診オッケー。

早くも立ち上がりかける私、制する医師。

薬塗られ小さな絆創膏ペシッ。


いいですね?もういいですね??


手術着から着替える?の問にかぶせ気味にこのままで!!


トイレへダッシュ…は絶対ダメで看護師さん付き添いでトボトボ歩いて向かう。


……尊厳は守られた。


見舞いに来た母に、絶対安静中うわ言のように頼んだコカ・コーラで一服…


全身麻酔明け、最初の一口は医師立会なのですか。なるほど。

普通は看護師さんだけでいいらしいけど、骨髄ドナーはより万全に。なるほど。


医師看護師にみつめられながら、ジャスミンティーゴクリ。

いや、コーラは流石に駄目な気がしたもので。


皆が去ったあとに速攻コーラゴクゴクしましたけど。


骨髄移植、何が大変だったか。

この問には声を大にして尿意。とお伝えしたい。


逆に言えばこれ以外特に大変なことはなかったです。


上がるかも。と言われた熱も上がらず。

痛むかも。と言われた傷口もなんともなく。

(酷い人は解熱剤や痛み止めが必要になるらしい。)


ビバ、健康体!!


落ち着いたところで改めて先生から手術のご報告。


私から抜かれた骨髄は、無事、向こうの先生の手に渡って新幹線(!)で運ばれていったそう。


とても抜きやすい血でするする(?)採れたこと。

量も予定量採れて、また造血幹細胞の数も文句なしだったこと。

トータル100点満点の若い血液です。と太鼓判!!


いやっほ〜い!!


ありがとうございます。これからも日本全国津々浦々美味しいものを貪り喰う所存です。


絶対安静解ければもう後は通常どおり。ぷらぷら歩いてもOK。

痛みも熱もないし。


病棟の面会スペースに患者さんと会社の同僚らしき人3人。

患者さん、同い年位かな。顔色、とても悪い。髪もないみたい。


少し離れたところに座り、なんとなく話を聞いてしまう。


今日から入院で、化学療法で行ければいいけど、駄目なら骨髄移植。


「骨髄移植って全身麻酔ですよね、痛いんですかね。」

「ドナーの人にはありがたい以外の言葉はないよ。」


聞こえた会話に、つい

「私、さっき抜かれてきました。骨髄」


あ、どよめかせちゃってごめんなさい。


「ほんとにありがたいです。お疲れ様でした。」


自分のための骨髄なわけでもないのに、深々と頭を下げられる。


なんだろう、自分が数多の病魔、感染症、遺伝子変異、そういったものにかかわらず、健康に生きているのは努力の上にあるのでは無く、ただの運。


また、この病棟にいる人たちがここにいるのは努力がなかったわけでは全く無くただの運。


全ては運でしかなくて、いつ自分がそうなるかなんて誰にもわからない。


だからこそ、健康な自分ができることがあるならやったらいい。ただそれだけ。


こちらもペコペコ頭を下げながら病室へ戻る。


骨髄提供するまで知らなかったことなのですが、

骨髄移植の1年後生存率は64.7%。

特効薬ではない。


このままだったらいつかは死を迎えてしまう。

だけど骨髄移植すれば…と望みをかけて受ける。


私の骨髄が本当に役に立つのか、誰にもわからない。

移植によって、もっと生きれたはずの命を縮めちゃうかもしれない。


私、健康に生きていること、もっと噛み締めて行こう。


圧倒的幸運の中生きている。その上での背が高い低い、頭の良し悪し、美女と私。そんなのほぼ誤差誤差!!


スタイルだって、独り身なのだって……誤差!

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