第3話 分かってたような情報
□○駅の南口に着くと、既に藤田くんが待ってた。大学生みたいなぶかぶかのパーカー着てキャップを被ってる……誰だお前。恵まれた背丈に似合ってるけど、年の差が出るからやめてくれないかな?
背広姿しか知らない年下丸出しの藤田くんの無作法さにイラッとする。こっちはお姉さま風にしてきたのに、釣り合いが取れない。いや、釣り合いなど求めてなかったわ!!
「白沢さん、ちわっ」
ちわっ……は、よく聞くんだけど相変わらずチャラい。
「こんばんわ」と、返しといた。
夕方の駅前の雑踏を二人で掻き分けて進む。チェーンのラーメン店、ドラッグストア、家電量販店やらの前を過ぎれば、居酒屋やバールが横丁にある。
「あ、白沢さん、こっち」
急に藤田くんに肩を掴まれて、ドラッグストアの店頭陳列棚に隠される。
「何? 」
「やべぇ、目撃〜」
声を潜める藤田くんの指し示す先、家電量販店から見覚えがあり過ぎる二人が出て来る。要くんと綾香さんじゃない。
「……やっぱりね」
「まぁ、あり得ますけどね」
そこは本当に同感。私は要くんと綾香さんと同じ部署でプロジェクトも同じ。要くんは社内でチーフの綾香さんに懐きまくり。ベタ惚れを隠そうともしていない。今、目の前の要くんは片手に購入品を持って、綾香さんの手を引いてる。緩んでかわいい顔になってる綾香さん、完全に要くんに陥落してるわ。
「めちゃくちゃラブラブ」
「あれ、いつからだろう? 昨日からかな? 全然聞いてないなー」
昨日のパーティー、最寄駅が同じ二人がタクシーでいっしょに帰ったから? 鈍感な藤田くんだ。チーフの綾香さんがかなり年下の要くんに手を引かれて、要くんのペース。あれは、昨日からの付き合いなわけないじゃん。
「あれは、昨日今日の付き合いじゃないでしょ」
「えっ!? 分かるんですか? 」
藤田くんがナチュラルに感心する。要くんと同期で友達のくせに察しが悪すぎるわ。社内の噂話を掻き集めて……普通に聞いて歩いてるな、コイツは。なぜか、私としては藤田くんに恋愛リサーチ指南をしてやらなきゃと使命を帯びてきた。とにかく鈍感でしょ!
ラブラブカップルぶりを目撃した要くんと綾香さんのネタがメインになりそうだ。私と藤田くんは、横丁の居酒屋に入った。
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