第22話 お好み焼きパーテー


 朝、優希からの連絡はない。

いつもだったらメールか電話が来るのに。


 そして、優希が家に来る気配もない。

一体優希の身に何があったんだ?


 バイトに行く時間になり、店に向かう。

武本先輩と雅がいつものように仕事をしている。

俺は、なんだかボーっと、しており心ここにあらず。


 とりあえず自分のに事をこなし一日が終わる。

先に帰ろうとしたら後ろから雅が追いかけてきた。


「純平、一緒に帰ろうか?」


「べつに、どっちでも」


 二人並んで帰る。


「先輩は?」


「今日も残業。人が足りないんだって」


「そっか……」


「元気ないね。何かあったの?」


 雅には日ごろからなんでも話している。

学校の事も、実家の事も、恋愛の事も。

俺は心に引っかかっている優希の件を話した。


「……少し距離を置いた方がいいんじゃないかな?」


「どうして? あいつの身に何かあったんだと思う」


「連絡が取れないのがおかしい。帰ってきた後、今までの態度が違うのが気になるよ」


「女の感か?」


「うん。純平、あまり深入りしないでね。今日の様子見ると、心配だよ?」


「大丈夫。心配してくれてサンキュな」


 そんな話をして、自宅に帰る。

帰っても部屋は暗く、いつも出迎えてくれた優希はいない。

電話をしても、コールはするけど、出てくれなかった。


――プルルルルルル


「細村?」


『どうした? 何かあったのか?』


「今家?」


『そうだけど?』


「あのさ、優希の部屋、電気ついている?」


『ちょっと待って……。うーん、灯りはついてるよ』


「分かったサンキュ」


 自宅にはいるようだ。

でも、なんで電話に出ないんだ?


 ちょっと心配になり、おやつとジュースを手に持ち、優希の部屋を訪れる。

さっきまで灯りが点いていた部屋は、今は暗くなっている。


 インターホンを鳴らしても、ノックをしても出てくる気配はなし。

電話したら電源が入っていないと、いつものお姉さんに言われてしまった。


 ……避けられている?

タイミングよく電気も電話も?


 買ってきたおやつセットを玄関にぶら下げ、メールだけ送っておく。


『玄関にジュースとおやつおいてきた。良かったら。あと、たまには連絡よこせよ、心配だろ』


 その日、俺が寝るまで連絡はこなかった。

一体何がどうなっているんだ?

もしかして、俺が知らないだけで何かしてしまったのか?

胸がモンモンするなか時間だけが過ぎていった。


――


 夏休みも残すところあと数日。

学生たちの祭りが始まった。


 課題祭り。

どうしてもこの時期は出された課題が進まなく、徹夜になる事が多い。

案の定、俺も徹夜だ。おかしい、なぜこうなった?


 優希が実家から帰ってきて数日。

連絡も取れなければ会う事も無かった。

俺は、優希から連絡が来るまで待つことにし、数日が経過中。


 そして……。


――ガチャ


 玄関の鍵が開けられた音。

誰だ? 部屋の合鍵を持っているのは……。


「純君! お久しぶりです!」


 目の前に現れたのは、いつもと同じ優希の姿。

心なしか、少し髪が伸びたのかな?


 顔をまじまじ見たが青あざはなくなっている。


「おっす、元気だったか?」


「ボチボチですね! あ、ジュールとおやつありがとうござました! しっかりと頂きました!」


「それは良かった。で、急に来るなんて珍しいな」


「へへー」


 俺の隣に座り、腕をからませてくる。


「どうしたんだ?」


「これなんですけど……」


 バッグに入った大量の紙類。

これは、もしかして……。


「課題?」


「正解です! 正解した純君には、私と一緒に課題をする権利をプレゼント!」


 優希の頭に軽くチョップをする。


「今までしてなかったのか?」


「……えへっ」


「マジか……」


 この量はまずい。

俺一人では対処できないぞ?


「どうしましょう……」


「しょうがない、応援を呼ぶか」


 俺は優希の為、自分の課題もしないといけなしい、出来る限り人を頼った。

そして、集まったメンバー。


 大原、細村、武本先輩、雅、そして北川。

優希と少し関係があったメンバーと俺の友人。 


 メールで『お好み焼きパーテーのお知らせと課題クリアに向けて』の案内を出した。

もちろん食費は俺持ちで、自宅でお好み焼きをする。


 ついでに課題を片付けると言う、夏休み終盤の恒例イベントだ。

ちなみに去年は武本先輩のアパートで焼肉パーテーだった。


「みんな、朝までオールします! よろしく!」


「朝まで? 今日中に終わらせるの?」


「イエス!


「おー、大原も来たのか?」


「細村、お前も?」


「純平、誘いずぎじゃ?」


「多いい方が楽しいと思うし!」


 俺と優希の残った課題は多め。

助けてくれるメンバーがいれば……。


「優希ちゃん、最近どう? あんまり連絡取れてなかったから」


「望海ちゃん、ごめんね。ちょっとパタパタしていてさ……」


 久々にあったと思われる優希と北川。

同じクラス、同じサークルなのに、連絡が薄くなってると。

一体優希の身に、何があったんだろうか……。


――


 深夜を回り、次第に集中力が切れてくる。

次第に眠くなってくるメンバーが出始めてきた。


 そして、残ったのは俺と優希、そして……。

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