第17話 女の第六感


 優希は一晩泊まり、また朝一で自宅に戻る。

そんな生活が普通になった。

お泊りの日はそれなりに遅くまで起きており、することをしっかりとする。


 俺から誘う事もあるし、優希からも誘ってくる。

気が付いたらお互いがお互いに依存した生活を送るようになっていた。


 今日は優希の授業が最後まであり、俺は一人でレポート作成中。

この時間の学食は人も少なく、サクサクはかどる。


「純平」


 声をかけられ顔を上げる。


「武本さん」


 この人は俺の先輩。

大学寮に入った時、初めて声を交わした先輩だ。

たまたま同じ学科で、色々と教わる事もあり、使わなくなった教科書もくれたいい先輩。


 そして、寮の隠し扉の奥にある宝の場所も教えてくれた。

寮生に代々伝わる大人の本。

年々増えていき、その数は百冊以上。

俺もしっかりとその本を増やしてきた。


「今時間ある?」


「大丈夫ですよ」


「最近後輩の子と付き合い始めたんだって?」


「雅から聞いたんですか?」


「そうだけど、純平大丈夫か?」


「どういう意味ですか?」


「いや、雅の話だとほとんど二人でいるらしいから、クラスメイトとか交流無くなっているんじゃないかって」


 確かに最近そうかもしれない。

優希と一緒にいるから、他の人と交流が減っているかも。


「確かにそうかもしれませんね」


「彼女に一途でもいいけど、他の交流もしっかりとね」


「はい、わざわざありがとうございます」


「あと、雅が純平の事気にしていたよ?」


「雅が?」


「今から話すこと、気分を悪くしないで聞いてほしい。その子、何だか普通じゃない気がするって。女の勘だってさ」


「普通じゃない?」


「僕にも良くわからない、その子の事知らないし。でも、雅の勘は良く当たるよ。純平、自分をしっかりと見てくれ」


 優希が危険? そんな事あるのか?

まぁ、ちょっと突っ走り傾向があるけど、普通の女の子だよ。


「分かりました。自分を見失わないように、気を付けますね」


 そんな話を先輩からされる。

先輩はいい人だ、それは間違いじゃない。

もしかしたら、雅は嫉妬しているのか?

ふふん、俺には優希がいるんだ、雅の声には答えられない。


「純君お待たせ!」


「お、やっと来たな」


「早く帰ろう。今日はうちだよね」


「そうだな、今日は何を作ってくれるのかな?」


「今日はパスタにしようかなと。純君の好きなパスタってなんですか?」


「俺か? 俺はミートソースだな!」


「分かりました! 今日も愛情たっぷりなミートを入れますよ!」


 依存しない。

俺達はただ、効率と生活費を節約するために共に行動している。

お互いに勉強の時間も取っている。


 それの何が悪い?

良いじゃないか。一緒にいる時間が増え、お互いの事を理解していく。

そして、お互いを求め愛し合う。


 雅の感も外れることがある。

俺はこの先も優希と共にいるだろう。


 なんせ、俺達は互いに好き合っている。

互いにに互いを求め合い、必要としている。


――


 そう、あの日までは全てが上手くいくと思っていたんだ。

全てが……。


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